「広くて安い」からグロス重視へ ―首都圏マンション市場の20年と今後(上)より続く
23区は需給バランス良く順調な販売
郊外部の価格上昇は上限値に近づく
今後の市況はどうなるのか。都心・城南・城西は、法人所有の低未利用地が少なく、土地案件も個人の小規模、相続案件等が多いため、分譲マンション用地不足は当面続くと予想される。マンション用地が比較的期待できるのは、城東・城北地区。中小の工場・倉庫・低利用空地がまだ多く、マンション適地の供給も期待できる。23区は、基本的に良好な需給バランスを背景に今後も順調な販売が予想される。一方、郊外は大型のマンション適地も多いものの、一部のエリアに供給が集中すると需給バランスが崩れる可能性はある。
価格は、マンション用地の少ない都心・城南・城西は、良好な需給バランスを背景に高値安定の状況が続くと予想されるが、ターゲットの購入体力の上限が近づいているため、今後の価格上昇幅は縮小していくと考えられる。一方で、これまで価格上昇が少なかった城南・城西、城東エリアでは価格上昇が期待される。またここまでは人気エリアの好立地物件が価格上昇をけん引してきたが、今後はこれまで割安だったエリアを中心に市場の底上げの傾向が予想される。
ただ、2020年以降、価格が上昇し始めた郊外では、一部の超人気駅を除けば7000万円にグロスの壁がある。通常の郊外物件は4000万円台、人気駅でも5000~6000万円台が平均だ。単価上昇に伴うグロス圧縮傾向は今後ますます強まっていき、郊外でも60㎡台の3LDK、50㎡台の2LDKの供給割合は今後ますます増加すると予想される。今後は郊外でのコンパクトマーケットの開拓も必要となる。
首都圏の新築マンションは、この20年間で分譲単価が60~80%上昇したが、需給バランス、超低金利、グロス圧縮、持ち家志向の4点に支えられ、販売好調が続いている。都心部ではさらに大幅な価格上昇が見られているが、所得の上昇がなく、購入体力に変化のない郊外マーケットに関しては、2001~2005年水準からグロス価格で1000~1500万円の上昇が価格上限値と判断されそうだ。
杉原貞之トータルブレイン副社長は「(好調な)郊外部がダメになるきっかけは値段。買える値段で作ること。その際に何か魅力付けが必要でこれがデベの努力。箱だけ作るのならば、顧客は中古を検討する」と指摘。分譲マンション市場は単価論よりグロス論、特に郊外マーケットでは、グロスの考え方を徹底することが重要であり、今後ますますグロス圧縮傾向は強まっていくと見られる。
2021/11/5 不動産経済ファンドレビュー