シリーズ;熱海・伊豆山地区土砂災害 ー安否不明113名、上流域で盛り土による開発行為・民間企業に支援の動き

 

 7月2日からの大雨によって静岡県熱海市の伊豆山地区は大規模な土砂災害が発生。熱海市の災害対策本部によると、5日午前7時現在の被害状況は、被害棟数約130棟(127世帯、215名)、死者2名(女性2名)と、甚大な被害が発生している。死者2名は伊豆山港で発見されており、山からの濁流が海まで達したことを示している。

 5日午前7時現在の救助者は7月3日に10名(男性6名、女性4名:うち負傷者(軽症)1名)、7月4日に13名(1名重症(女性)、12名無傷(男性5名、女性7名))救出しているものの、安否不明者は住民基本台帳ベースで113名に達する。

 平坦な土地が少ない熱海市内で、比較的広いスペースがある熱海港および港内駐車場、熱海港海釣り公園には警察・消防と自衛隊の支援車両が集結。伊豆山の被災地域への前進基地と化している。国道135号と有料道路の熱海ビーチラインは土石流の影響で通行止めとなっており、鉄道以外での市内へのアクセスは困難な状態。ただし被害は市内でも伊豆山地区のさらに一部に止まっており、その他の地域はほぼ無傷。

 伊豆山地区における被災状況はどうか。土石流が市内の住宅地に流れ込む様子がSNS上で拡散されている。このうち、3日に投稿された土石流の映像では、山から流れ出た土砂が激流となり、酒類販売店のビルを直撃する様子が映っている。

 この建物のすぐ上流に位置するリゾートホテル「ラビスタ伊豆山」(熱海市伊豆山433-13)も建物に直撃したとみられる。同施設のホームページによると、土砂崩れの影響により緊急避難対象地域となったことを受けて臨時休館した。土石流は東海道新幹線と、JR在来線の橋梁下をくぐってさらに下流の国道135号線に達した。135号線沿いにある、大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツが運営する「熱海伊豆山ホテル水葉亭」は現在状況を確認中。同ホテルは、本日15時に被害状況や今後の運営などについて情報開示を行う予定。

 同じ伊豆山地区でも谷間、谷筋によって状況は大きく異なっている。土砂崩れが発生した現場すぐ近くにある「ユニホー伊豆山研修センター」には被害はなし。「建物に全く被害は出ていない。だが状況が状況であるため稼働はしていない」(ユニホー管理本部)とのこと。

 被害が明らかになるにつれ、民間では支援の動きが広がっている。ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクでは3日より、ふるさと納税で被災自治体の災害支援に寄付できる「ふるさとチョイス災害支援」において、静岡県熱海市と神奈川県湯河原町を対象とする災害支援の寄付申込みフォームを開設。4日夕方の時点で両自治体へ計150万円超(120件以上)の寄付が集まっていることを公表した。寄付金は災害支援金として返礼品はなく、被災地の復旧・復興に使われるという。

 上流域の宅地開発で何が

 今回の土砂災害の発生域は静岡県が示しているハザードマップとほぼ一致する。ただし今回大規模な土砂災害が発生した一帯は土砂災害警戒区域の指定で、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、逢初川(あいぞめがわ)の源流域のみ。レッドゾーンである土砂災害特別警戒区域、災害危険区域(崖崩れ、出水等)、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域内における住宅などの開発許可は厳格化されているものの、土砂災害警戒区域はいわゆるイエローゾーンと呼ばれ、宅地開発行為は規制されていない。

静岡・熱海伊豆山地区のハザードマップ。レッドゾーンの指定は一部地域に

 今回の土砂災害が発生した場所の上流では宅地開発が行われており、開発の際に行われた盛り土が崩れたことを指摘する声がある。熱海市によると、土石流は約15年前に宅地造成のため木を伐採し盛り土された場所から起きたという。静岡県の川勝平太知事は、上流部で開発行為があったことについて、土石流の原因について宅地などの開発との因果関係を追及する方針を示している。

 衛星写真では、宅地開発などによって樹木が取り除かれ、地面が露出したエリアが確認できる。このエリアの一部では外資系企業によるソーラー発電施設の開発が行われている。静岡県では一連の災害対応を行ったのち、こうした開発行為との関連について調査を行うものとみられる。

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