マッチボックス(本社・新潟県新潟市)は、人材バンクを構築できる次世代HRシステム「マッチボックス」の営業活動を本格化させる。企業が短期の労働者を確保する場合に、派遣会社など外部の人材プラットフォームに頼らずに、自社で人材データベースを構築することでOBOGやギグワーカーを中心に人を採用できるような仕組みだ。新潟県でコンビニを展開する企業の新規事業としてローンチしたスタートアップ企業であり、不動産関係ではオフィス清掃のほか、不動産投資会社で物流倉庫のテナント企業が庫内作業のシフト募集やシフト調整で採用されている。今後は商業施設やマンション管理業界などへ営業活動を進めていきたい考えだ。セールス統括本部の千葉寛之・取締役に話を聞いた。
会社立ち上げの経緯について
前身企業は2004年に創業したフュージョンズだ。フュージョンズは新潟県や首都圏で大手コンビニエンスストアチェーンのフランチャイジーとして38店舗を展開している。コンビニは慢性的な人手不足に直面しており、それは他の地域も同じで全国的な課題だった。そこでフュージョンズがチェーン本部へ呼びかける形で、本部との共同出資による派遣会社を2013年に立ち上げた。私は大手コンビニエンスストアチェーン出身で、その立ち上げに関わった。出身のチェーンでは人材採用で加盟店支援を行ってきた。人材の募集、教育、定着、再雇用を10万人単位で延々と同じことを繰り返している。この無駄をなんとかしたかった。だが派遣ビジネスは拠点があるところでしか成立しない。コンビニは全国にある。そもそも人がいないところに派遣は成立しづらい。一カ所に集めて研修し、そこから通える人でなければ派遣ができない。大手のコンビニは主要都市だけではない。だから派遣に頼らずに人手不足を解消しなければ本質的な課題解決とはならない。そこでITを活用することで人材の課題解決ができると考えた。システムはベトナムのオフショアで開発しており、マーケティングチームのトップはアメリカ人と多国籍な構成だ。
アプリ「マッチボックス」とは何か
働き手の立場で言えば、アルバイトのシフト調整が楽にできるアプリだ。グーグルカレンダーのようなわかりやすいUIで、視覚的にシフトを調整することができる。雇用者サイドから見れば、人が必要な時に都度外部の人材会社を頼るのでなく、自ら人材会社の機能を持っておくことができるものだ。採用のたびに延々媒体費用を掛けることは無駄だ。OBOGやギグワーカーをデータベースへ溜めておけば、必要な時に経験者を雇うことができ、採用・教育コストを一気に下げることができる。企業単位で人材バンクを作るイメージだ。
コストの問題
コンビニの場合、例えばA店の人をB店でも働いてもらうことで 労働時間を最大化させることができる。辞める理由もその店がたまたま嫌になったのか、働けなくなったのか。同じコンビニの他の店舗なら働けたのかもしれないし、一時的に辞めるケースもある。これまでは媒体費用を掛けて外部の人材会社を使うなどしてこうした経験者を再雇用していた。だが経験者採用とは、店にとっては一度辞めた人がまた来ただけに過ぎない。ホテルでも時期によって人が必要な時期、不要な時期がある。人が必要になるたびに媒体費用を掛けるのは無駄だ。だからアプリでプールしておけば、必要な時期に募集を掛けて人材を確保することができる。自分たちの人材のプール、そこには現役の人もいれば経験者もいるだろうが、来て欲しい人を入れておいて、そこにアサインすれば、突然欠勤があってもアプリ上でシフトを埋めることが可能となる。
不動産業界での活用について
PMに強い大手グループの清掃子会社で活用いただいている。純粋な不動産会社では今はその1社だけだ。だが他の業態でも活用は可能だ。例えばショッピングモール。そこにはテナントとして様々な店舗が入っている。A店の人をB店にシェアできれば人手不足が解消できる。例えば地方や郊外のモールで働く人は半径10〜15キロ圏内の人だろう。どこの施設も近場の人が働き手となっているはずだ。だがA店もB店も同じエリアで人を募集しているだろうから、採用の効率はよくない。例えばモールで一つのマッチボックスを入れて、採用した人材をシェアできればいいのではないか。モールの管理者がそういうプールを用意して、そこには一定数の人が貯まっているということであれば、テナントの誘致もしやすくなるのではないか。物流会社も同じだ。庫内作業などは人の募集を派遣会社に頼っており、その費用が重くのしかかっている。庫内作業のベンダーがどうやって利益を上げるか。売上を上げるか人件費を減らすかしかないため、IT化は有益な手段だ。同様の理由で、マンションや賃貸住宅などの不動産管理会社における清掃や点検などの人の確保でも相性は良いはずだ。
導入イメージ
導入コストは課題を早期に解決する支援も含めた初期費用と月額費用。導入フローとしては、まずはどういうDBを作るかを検討する。例えば既存の従業員向けにマッチボックスを導入する。もっとシフトを入れたいという働き手に対しては、マッチボックスを通じて空白のシフト情報を提供する。退職した人はプールしておいて、再度募集する場合に優先的に声を掛ける。別に採用サイトを設けているので、全くの新規募集もマッチボックス経由で可能だ。非正規雇用のマーケットは国内に2000万人いる。このマーケットすべて対応できる。
採用でIT化が進むとどうなるか
将来的に各社が人材のDB を持ち、労働者と雇用者の中間に位置するプラットフォームが存在しない、派遣会社を通さずダイレクトで繋がる世界へと向かうのではないか。そこでマッチボックスを活用すれば、人材の質を下げることなく、採用スピードを上げて採用コストを下げることができる。利用者であるA社とB社が人材を共有するなどの連携もありうるだろう。マッチボックスは業種の関連性の高さよりも事業所の距離の近さが相性が良い。人材不足の解消はそこにいる人で生産性上げることが大事でそのためにはITが必要。雇用者と働き手の間には、関係性は継続的だが働き方は柔軟に、ということが今後求められてくるのだと思う。