国産木材の利用拡大と環境貢献を両立―日本木造分譲住宅協会、菊谷憲太郎氏(三栄建築設計)に聞く

木材調達が滞る「ウッドショック」の余波が国内で続いている。主に中小工務店らの住宅生産に支障が出ていたが、複数の大手メーカーも販売価格に転嫁し始めるなど影響が広がりつつある。調達合理化と環境貢献を旗印として4月に作られた新団体、日本木造分譲住宅協会事務局の菊谷憲太郎氏(三栄建築設計経営企画本部)に設立の狙いや調達戦略を聞いた。  

―木材が足りない。三栄建築設計としての対応は。  

菊谷氏 輸入材の調達難につられて国産材の需給もひっ迫している。当社は昨年から本格的に原料を国産材に切り替え始めており、必要な材料を確保できるよう製材工場などと協議していた。このため現時点で事業への直接的な影響は抑えられている。

 ―住宅業界の広域に影響が波及している。

 菊谷氏 一部のプレカット事業者が生産を縮小している。このため、必要な木材は確保してあるが、加工と製造を手配するのに苦労している。ただ現時点で住宅を建てられないといった状況ではない。

 ―木材不足が長引けば国産材の調達も難化する。

 菊谷氏 先行きは不透明だが年内は輸入材不足が続きそうだ。だが当社の住宅には輸入材をほとんど使っておらず、直接的な打撃を回避できている。将来的に木造住宅の国産材使用率を100%にする計画だ。

 ―日本木造分譲住宅協会の中心メンバーだ。

 菊谷氏 国産材の利用拡大とそれを通じた環境貢献が設立の大きな狙いだ。企業活動はボランティアではなく、収益を確保できてこそ環境や社会に末永く貢献できる。組織化したのは腰を据えて取り組むためだ。

 ―設立から3カ月。現時点での取り組みは。

 菊谷氏 材料の新たな仕入れ先を開拓している。会員が必要とする量の木材をしっかり融通できるよう生産工場を確保する。ウッドショックが収まるまで新規開拓は難しそうだが、まずはとっかかりを作りたい。

 ―加工・製材工場との関係構築は順調か。

 菊谷氏 協会を設立するに当たり、新たに4社と取引関係を作った。協会として会員の需要を取りまとめ、集成材メーカーに伝えて交渉していく。今後は森林組合などと取引する体制を作る。来春以降には、主要な材料仕入れ先である青森や秋田、岩手、福島などで植樹活動も始めたい。

 ―東日本以西の地域に生産工場を確保する考えは。

 菊谷氏 関西や中部にも広げたいが、その場合は仕入れ先も一から確保する必要があり時間がかかる。

 ―6月から新たに会員の募集を始めた。  

 菊谷氏 加入の問い合わせは現時点で会員3社の縁故が多いが、大手企業の入会希望もあった。門戸を広げ、全国から会員企業を募りたい。国産材を共同で調達する枠組みに入れるのは大きなメリットだと思う。

 ―飯田グループホールディングスが資材子会社4社を統括する中間持株会社を立ち上げる。

 菊谷氏 当協会の会員と事業エリアがさほど重なっていないこともあり、競合するという意識はない。

 ―協会の活動を将来的にどう広げる。

 菊谷氏 当面は材料調達先のパイプ作りに専念するが、先々は林業の人材育成が大きな課題だと考えている。国産材の需要は強いが生産の担い手が足りず、供給量を増やせない状況だ。当社にはベトナムの人材を受け入れてきた経緯がある。現状では法的な壁があるものの、彼らを担い手として登用する余地がないか研究している。(日刊不動産経済通信)

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