シリーズ;東京「人口減」をどう見るか⑩ 賃貸需給は回復へ、シングル賃料は当面厳しくー ADインベストメント・マネジメント 高野剛社長
ADインベストメント・マネジメント 高野剛社長

東京「人口減」をどう見るか ⑨に続く

ポストコロナ時代を迎えて賃貸需要の変化をどうみるか、東京の「人口減」を賃貸住宅マーケット目線でどう見ているのか。住宅系Jリートとして国内最大の資産規模を誇るアドバンス・レジデンス投資法人(ADR)の運用会社、ADインベストメント・マネジメント株式会社の高野剛社長に、ADRの稼働状況などの動向と、東京の賃貸住宅市場について聞いた。

―今期(21年2月〜7月)と前期(20年8月〜21年1月)の違いは

高野氏 前期は需要が減退したが今期は戻っている。ただし今期においても、シングルは賃料調整しないと契約が取れない状況で、その傾向は前期から変わってない。テナント入替時の新規契約の賃料上昇割合は前期の4割程度とほぼ同じで、賃料の上昇と下落の割合は変わってない。つまり市場のモメンタムがまだ弱いので、引き続き賃料上昇トレンドよりも下落トレンドの方が強いというのは前期と同じ。でも賃料の上昇幅は前期の4.1%よりは上向いている。

―前期よりも少しは良くなったと

高野氏 前期との比較で言えば今期は需要が改善した。人の動きは戻っている。

だが、賃料の絶対額はコロナ以前のレベルには戻っていない。23区のシングルで言えば11万円が平均値だが、過去2年で上がっていたところ、高いところがそんなに高い値が付けられず、元々弱かったところは弱いままなので、全般的にモメンタムが弱いということになる。

―解約・成約件数で見ると

高野氏 前期は解約件数の方が成約件数を上回ってしまっていたが、今期は逆転し、成約件数が解約件数を上回っている。需要自体はコロナ前に戻っている。今期は成約率が上がって稼働率が上がっているということである。緊急事態宣言も何度も発動されたことに人々が慣れてしまい、普通の経済活動が行われているということだ。

―経済・雇用環境との相関について

高野氏 ADRのマンションの入居者の平均年収は全体で約660万円。シングルタイプでも年収は約500万円だ。平均よりも高い年収帯であり、コロナの影響はほぼ受けてない人たちではないか。とはいってもシングルの500万円もあくまで平均値であり、高い人もいれば低い人もいる。転居などで影響したのは年収が低めの人たちだと思っている。所得層・年齢層が同じ20代でも600万以上の人から300万円代と倍の所得差がある。年収が高い人はコロナの影響を受けずにいるが、低い人はより安い部屋へ移るという側面があるのかもしれない。コンパクトとファミリーについては、平均年収が660万円、平均年齢は35歳でDINKSの方が多い。この方々にははっきりとしたマイナスの影響はでなかった。

―経済的な問題以外で、純粋に広い部屋へ移るという需要はどうだったか

高野氏 当社のポートフォリオ上では、データとして確認できるほどの事例は見受けられなかった。昨年1年間を見ても、都心から郊外へというデータは確認できていない。35歳前後の日本人の平均年収よりも所得が高い人が、都市としての東京の魅力を捨てて郊外へ移動するというのは実数としてはそう多くないのではないか。東京は利便性が高く、世界的に見ても物価は低く、飲食の質が高い。人々は東京の中心部に集まっている。そういう方々が郊外へ、というのは嗜好として考えにくい。所得の高い人ほど、あり得ないのではないか。   

―今年の賃貸市場の繁忙期の動きとしては、需要は戻っているということだが シングル以外の賃料の部分はどうか

高野氏 20年2月〜7月期は、東京23区のコンパクトは、テナント入替時新規契約のうち賃料上昇の契約の割合が9割、賃料上昇幅の平均は7.5%だった。同じくファミリーは賃料上昇の契約の割合が9割、賃料上昇の平均値が9.9%だった。これに対して前期(20年8月〜21年1月期)は、コンパクトは賃料上昇の契約の割合は6割に低下、賃料上昇幅も平均で5.5%となり2%低下した。ファミリーは賃料上昇の契約の割合が8割で1割しか落ちていない。賃料の上昇幅は8.4%までしか下がってないので、3つのタイプで比較すると、ファミリーがそこまで変動がなかった。コンパクトタイプも少しは落ちたが、シングルと比較すればそんなには落ちてはいない。

―コロナの影響はシングルだけと

高野氏 シングルだけ、といえば語弊はあるが、総合的に言えばそういうことだ。

―今また緊急事態宣言だが、開けるとなると賃貸市場にはどういう影響があるか

高野氏 足下は需給が戻っている。コロナに関係なく例年4、5月は稼働率が下がる。6月以降は若干が上がってくるのが例年の傾向であり、3月がピークで5月がボトムで6月7月と少しずつ上昇すると、今のところは思っている。 

―賃料の回復については

高野氏 今しばらくまだ上昇というトレンドにはならないだろう。年収の低い層の雇用環境が大きい。シングルでも年収が高い人はいいが年収が低い人は引き続き、厳しいと思うので、全体でならすと、シングルタイプは今しばらく厳しいのではないか。

―東京から人口が減っている

高野氏 例えば23区の端境にいるような人たちが、賃料を安くしたく外に動くのは必然でわかりやすい構図だ。でもそういう人たちの割合が高いとは思えない。賃貸市場全体への影響は小さいだろう。

―学生の動きはどうか

高野氏 A D Rでは学生マンションを6棟運用している。稼働率は、オペーレータの稼働率もほぼ100%。実稼働が100%に戻っている。学生マンションの総戸数は1700戸ある。大学の授業がオフラインで再開するということなのではないか。法人需要は個人と比べて、若干減退しているがこれが大きく賃貸市場の動向に変化があるとかではない。 

―コロナを受けて今後の賃貸市場のニューノーマルは何か

高野氏 コロナを受けて人々の趣味嗜好が多少変わったところで、それが賃貸マンションにどう影響を与えるかという点で言えば、特にないと思う。デュアルライフとかワーケーションとかの言葉が先行している感があり、果たしてそれが定着するのかどうか。例えばワーケーションは職種によっては認められない部分があるし、新しい賃貸マンションの市場で変化があるかというとあまりないのではないか。これから変化していく部分というと、リモートワークはある程度は定着すると思う。在宅勤務が増えて、賃貸マンションも狭い部屋よりは若干広い部屋が選ばれるようになるとか、もし狭くても単なる1Rではなく、1DKのニーズが高まる、ということはあると思う。

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