トップインタビュー マンション管理の未来58 東急コミュニティー社長 雑賀克英氏(上)より続く
日頃の管理が評価 認定制度・評価制度がモチベーションにつながる
――管理業界の今後の見通しについて。
雜賀氏 マンション管理業務は、近年頻発する自然災害やコロナ禍において社会的に意義がある業務であり、社会的インフラのひとつでもあると思っている。一方で管理業務に携わる社員がやりがいを持つのは難しい側面があり、前向きな姿勢で業務ができる環境を整えることは重要だ。国の認定制度や管理協の評価制度は一義的には管理組合のためのものであるが、日頃の管理や資産価値向上への取り組みが評価されるという意味においては、管理に携わる社員にとって苦労が報われることにつながるのではないかと思う。業界を挙げて認定制度や評価制度を前向きにとらえ、少しでも早く社会に浸透していきたい。さらに、ITを活用した管理業務の効率化や省力化によっても、社員のモチベーションが高め、やりがいのある仕事として管理業に取り組んでもらえるようにすることは経営層として力を注ぎたい。
築40年を超えるマンションが増える中で老朽化したマンションへの早めの対策は資金面と建物のハード面の両面から対処していかないといけない。場合によっては建て替えと修繕の比較検討も必要になるだろう。管理会社としても知見を深め、お客様にソリューション型の提案をしていきたい。当社の管理実績を生かし、老朽化したマンションへの対応を先頭に立ってやっていかないといけないと考えている。
――環境に対する取り組みについて。
雜賀氏 東急不動産ホールディングスの中で環境は経営の大きな柱に据えている。それぞれのグループ会社でCO2の削減や省エネに取り組んでいるところである。当社としても管理組合やビルオーナーに対して創エネ・省エネへの知見を広め、提案活動を積極的に進めていく方針で、そのための研修施設として技術研修センター「NOTIA」を開業し、社員に実際体験してもらうことで提案力を磨いていこうと取り組んでいる。管理マンションでの太陽光エネルギーの活用や省エネによるコスト削減など管理組合にとって有益な提案をしていきたい。また、「NOTIA」は省エネと創エネで建物が使う一次エネルギーを75%以上削減しており、「NealyZEB」認証を取得した建物だ。1月12日には斉藤鉄男国土交通大臣の視察があった。国交大臣は「民間施設にも環境への取り組みを広げてほしい」と語っておられた。
また、当社は大規模修繕工事の周期を従来の12~13年を、15~18年に長期化する商品の提供を進めている。大規模修繕工事の周期が延びれば結果的にエネルギーの削減になり、管理組合の財政負担の軽減につながる。専有部に対しても省エネに関する提案を進めていきたい。国としてカーボンニュートラルを推進するのであれば、省エネへの投資について手厚い補助金の支給や低廉な融資枠があるとありがたい。管理会社の立場としてできることは、選択型サービスを管理組合に提案することによって、最低限の管理サービスは維持しながらメリハリをつけた出費ができるという仕組みを提供し、場合によっては修繕積立金や省エネに関する投資に回せるようにきめの細かいアドバイスを行っていくことだと思う。
――政策要望は。
雜賀氏 認定制度、評価制度が普及していくために管理組合へのインセンティブは業界を挙げて要望していかないといけない。国が先頭に立って認定制度を取り組んでいただいたことは画期的なことだと評価している。そこで、もう一歩踏み込んで制度の普及にも力を注いでほしいとお願いしたい。また、リフォームに関する融資の拡大についても考えてもらいたい。加えて重要事項説明の緩和について、コロナ禍の中で特例が出されているところであるが、今後、ペーパーレスや押印廃止の流れが進む中で省力化すべきもののひとつであろうと思う。マンション管理適正化法の時代に合わせた改正は引き続きお願いしたい。
##雜賀 克英(さいが かつひで)
1957年10月14日生まれ。1980年3月横浜国立大学経営学部管理課卒業、同年4月東急不動産㈱入社。2002年4月同社都市事業本部SC開発部統括部長に就任、資産活用事業本部シニア事業部統括部長を経て、2006年4月同社執行役員。2011年4月㈱東急コミュニティー執行役員、2016年4月同社代表取締役社長執行役員[現任]、2017年4月東急不動産ホールディングス㈱取締役執行役員に就任。
2022/3/5 月刊マンションタイムズ