新時代の管理運営を探る42 冷暖房の利用効率が上がり、健康に良いだけではない マンションの長寿命化にも役立つ外断熱改修(上)  ー飯田太郎(マンション管理士/TALO都市企画代表)

 前号の本欄で多摩ニュータウンのビスタセーレ向陽台団地が、約15年かけて一歩ずつ管理組合の合意形成を積み重ね、コロナ禍の中で外壁・屋上等の外断熱改修を実施した事例を紹介した。外断熱改修は実施例が少ないこともあり、管理組合や区分所有者向けの情報が乏しい。そもそも内断熱と外断熱の違いも理解されているとはいいがたい。外気の暑さ寒さの影響が少ないため冷暖房の使用を抑え、二酸化炭素(CO2)の排出量削減に寄与するだけでなく、コンクリート躯体の劣化を防ぐことで、マンションの長寿命化にも役立つ外断熱の概要、効果と課題等を紹介する。

 マンション等の断熱は、建物の躯体コンクリートの内側(住戸側)の壁や天井等に断熱材を入れることで、外気の温度変化が室内に与える影響を緩和する内断熱と、断熱材で建物の躯体全体を包み込む外断熱に大別される。北欧やドイツ等の寒冷地や日本でも北海道や北陸では外断熱が多く採用されているが、マンションが最も普及している首都圏や近畿圏では大部分が内断熱である。原設計が内断熱であるマンションを、大規模修繕工事で外断熱に改修したビスタセーレ向陽台団地のような例も少ない。通常の外壁補修に比べ費用がかかる外断熱改修に区分所有者の理解を得るのは容易なことではない。
 日本のマンションの多くが内断熱を採用している理由は、外断熱マンションが割高であるにもかかわらず、さまざまな効用があることを理解しているエンドユーザーが未だ少ないこと、そもそも外断熱マンションの設計・施工に慣れている設計事務所や施工会社が少ないこと、流通市場での価格評価が立地と築年数で決まり、建物の性能がほとんど考慮されていないことなどがある。
 このように従来型のマンション事業のビジネスモデルでは、なかなか採用されにくい外断熱だが、冷暖房の効率化や健康への好影響だけでは測れないメリットがある。
 ユーザーにとって最も分かりやすく重要なメリットは、建物の寿命が延びることである。外断熱の特長は、内断熱に比べコンクリートの躯体が外気温の変化の影響を受けにくいことである。東京の1年を通しての1日の気温差は夏場2~3℃、冬場でも5~6℃だが、直射日光にさらされ、夜間の冷気を受ける建物の屋上や外壁の温度差はきわめて大きくなる。内断熱のコンクリートは夏の直射日光を受けることで70℃程度になり膨張する。冬の明け方には0℃以下になり収縮する。内断熱のコンクリート躯体の外壁や屋上は、こうした膨張・収縮が毎日繰り返されることで、細かい割れ目が生じることになる。この割れ目からや雨水や大気中の汚染物資が浸入することや、結露の発生でコンクリートの中性化が加速し、鉄筋の腐蝕も進むことになる。
 これに対し外断熱マンションでは、コンクリートの躯体をすっぽり断熱材で覆うことにより、外部環境の影響を受けにくくなる。躯体の温度は一年を通してほぼ一定に保つことで、躯体を劣化させる原因となる膨張・収縮を抑制できる。コンクリートの躯体は管理状態が良ければ、100年程度は持つと言われているが、膨張・収縮による劣化が進行すれば寿命は短くなる。外断熱でコンクリート躯体を保護することは、マンションの長寿命化を進めるための基礎的な条件を整えることになる。
実は日本の住宅の寿命はアメリカやイギリスに比べ大幅に短いことはかねてから指摘されている。国土交通省の調べによると、滅失住宅の平均築後年数は日本が30年程度であるのに対し、イギリス88年、アメリカ66年である。(国土交通省 「長持ち住宅の手引き」)
 日本ではマンションが建替えに至る年数も短い。東京カンテイが2014年に発表した「マンション建替え寿命」によると、全国で建替えられたマンション198件の築年数の平均は33.4年である。東京は40年と全国平均より少し長いが、築後70年以上経過した同潤会アパートの建替えが行われたことが影響しているようだ。

(冷暖房の利用効率が上がり、健康に良いだけではない マンションの長寿命化にも役立つ外断熱改修 下に続く)

月刊マンションタイムズ 2020年12月号 

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