“量”から“質”への転換点 ―コロナ禍で進んだ商品企画の多様化(上)より続く
ZEH-Mへの取組みやDXへの対応が進む
立地のみならず求められる大きな発想の転換
地球温暖化で自然災害の危険度が高まるなか、2021年はコロナとは関係なく、温室効果ガス排出量の削減問題やSDGsへの関心も急速に高まっている。大手・準大手のデベロッパー各社が先行して、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のうち「ZEH-M」(断熱性能・省エネによる原稿の省エネ基準から20%削減、さらに再エネを導入し100%削減)に取組んでいるが、現状では建物の省エネ性能を高め、再エネ導入を求められない「ZEH-M Oriented」がメイン。三菱地所レジデンスは2030年までにすべての分譲物件、賃貸物件について、Oriennted以上を標準仕様とする方針を打ち出している。ZEH-Mへの対応で高コストとなることはネックだが、大手・準大手の取組みスピードを見れば今後、ZEH-Mの普及は加速するものと見られる。
2018年からZEH-M事業の補助金交付事業が始まっており、現在全国で76プロジェクトある。エリア別では首都圏が24プロジェクトと1位で2位は関西地区が18プロジェクト。デベロッパー別では穴吹工務店が1位、大京が2位だ。
さらにDXへの対応もある。これまで不動産業界はIT化が進まない典型的なアナログ社会でIT化は喫緊の課題だったが、コロナ禍によって、非接触の観点からデジタル化が一気に加速している。販売面でもオンライン営業やリモート重説、パソコンを介しての資金相談、ローン申し込み等、各種書類のデジタル化が進み始めているが、同時にその先にある販売・管理サービス等の顧客サービスの変革を目的としたDXに取組む必要性も高まっている。また商品付加価値面でも、IoTを活用したスマートホームは多く採用されており、今後さらなる進化が期待される。設計・建築の現場でも、施工・管理面でペーパーレス化、IT化、ロボット化が進んでおり、今後のモノづくりにDXが与える影響は大きい。
トータルブレインの杉原禎之副社長は「これまで住宅に求められたのは、生活の場としての“箱”の機能だったが、新しい空間・機能・サービスの提供による新しい需要の創造が必要」と指摘。「コロナ禍が住宅の“量”から“質”への転換点になっていく」と見通す。そのうえで、「デベは商品づくりのうえでは顧客に寄り添うことが1番。メーカー思考ではなく、トライアンドエラーの姿勢が必要だ」と強調する。デベロッパーは立地戦略のみならず、商品企画戦略面においても、同様に大きな発想の転換が求められている。
不動産経済ファンドレビュー