新時代の管理運営を探る55 アリーナコーストが地区防災計画を策定 江戸川区内マンション協議会は計画普及に向けて取り組み(下) 飯田太郎(マンション管理士/TALO都市企画代表)
マンションタイムズ

新時代の管理運営を探る55 アリーナコーストが地区防災計画を策定 江戸川区内マンション協議会は計画普及に向けて取り組み(上)より続く

自主防災組織は中期計画(2017年~20年と21~24年)を作成。作成にあたり居住者と管理組合役員によるワークショップを開催する等、幅広い意見を反映できるようにした。中期計画に基づき、各年度の具体的な活動内容を記載した年度計画を策定している。

地区防災計画案の作成に先行して、各家庭における災害への備えや対応をコンパクトにまとめた、アリーナコースト防災マニュアル(家庭用)を2020年5月に全戸配布した。21年には、自主防災組織を中心とする災害への備えや対応を網羅的に記述したアリーナコースト防災マニュアル(自主防災組織用)を作成、これが地区防災計画案のベースになった。

 また、2019~20年度には、国土交通省「マンション管理適正化・再生推進事業」の実施主体として選定された「マンションライフ継続支援協会」(MALCA)に協力し、地震・水害が同時に発生する複合災害や新型コロナウイルス感染症への対応についても検討した。

 こうした積み重ねのうえに、2020年3月から21年3月までの1年にわたり、地区防災計画案の策定についての検討会を45回開催。警視庁災害対策課、熊本県マンション管理組合連合会、江戸川区内マンション協議会、MALCAの協力も得ながら、内容・構成等を検討した。作成状況は逐次理事会に報告され、2020年11月の理事会で暫定版(発災から24時間までの対応)を使用してシミュレーション訓練も実施、内容の検討、修正を行った。こうした経緯を経て21年3月の管理組合総会で、地区防災計画案を江戸川区に提案することが可決され、4月の理事会で最終承認された計画案を江戸川区に提出した。

 計画案を検討する過程で江戸川区危機管理部防災危機管理課と再三協議を行い、区からは上位計画である江戸川区地域防災計画との整合をとることが特に求められた。2021年11月に江戸川区地域防災会議が開催され、アリーナコースト地区防災計画案は正式に承認。江戸川区地域防災計画に位置づけられ、法定計画となった。

地区防災計画の普及に向けて 江戸川区とマンション協議会の取り組み

江戸川区は区内の住民組織による地区防災計画の策定支援に熱心で、「地区防災計画策定プログラム事業」を実施、ホームページに「地区防災計画策定の手引き」等を掲載している。区内でこれまでに策定された地区防災計画は、戸建住宅等で構成する町内会等によるものが多く、マンションの管理組合によるものはアリーナコーストが初めてである。

アリーナコースト管理組合も加入する江戸川区内マンション協議会は、震災リスクを軽減するために防災モデルマンションをつくる・広めるための「あんぜんマンションプロジェクト」に取り組んでいるが、その活動の一環として2022年度から「江戸川区地区防災計画策定事業」に参加するマンションの管理組合の募集を始めた。2~3月を準備期間とし4~11月の約半年の間に計画案を作成し、地域防災会議に提案をすることを目指す。アリーナコースト地区防災計画作成で中心的役割を果たしたメンバーも支援に入る。

アリーナコースト地区防災計画も、マンションの管理組合として初めて策定しただけに、今後計画を運用しながら補強、充実をはかっていく必要がある。

例えば、地震発生時等に小中学校等に開設される避難所との関係は、現在の計画には明示されていないが検討課題である。避難所には避難者を受け入れるだけなく、避難所に来ない被災者にも情報や物資を提供する役割があり、在宅避難をする予定の人が多いマンションにとっても重要な施設である。避難所開設の中心となるのは町内会等であり、日頃からその活動に協力することで、地域とマンションの連携をはかることができる。

 江戸川区は東京23区のなかで最もマンション戸数が少ないが、冒頭に記したように水害の被害を受ける危険性が高い。地震に関する地域危険度測定調査(東京都)の結果を見ても危険度の高い町丁が多い。アリーナコーストや江戸川区内マンション協議会等の取り組みが進むことで、マンションの災害対策の先進区と言われるようになるだろう。

月刊マンションタイムズ 2月号

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