東急電鉄は2023年3月に運賃改定を実施する。東急は運賃の改定について国交省へ申請を行っており、国は11日、改定率等の中身についてパブリックコメントの募集を開始した。改定率は普通運賃13.5%、定期運賃12.1%で、平均改定率は12.9%。初乗り運賃は10円程度の値上げで140円となる。
通勤以外に観光や都市間移動など定期外利用が多いドル箱路線である東横線は、渋谷駅~横浜駅間で現金運賃280円が310円に値上げとなる。世田谷線は全区間一律160円とする。通学定期については家計負担への配慮から料金は据え置き。
東急が運賃値上げを決めたのは、コロナ禍による利用客の減少と、ホームドア・センサー付固定ホーム柵の全駅設置、東急所属全車両への防犯カメラの設置といった設備投資が負担となっていることが主な理由。2020年度の定期券減収率は、19年度比で関東民鉄では最大の落ち込みとなった。これを受けて東急は、21年11月の四半期決算発表で、「テレワークが定着しており、定期利用者が大きく減った。今後もコロナ前水準への回復は見込めない」とし、国に運賃値上げを申請することを公表していた。申請を受けた国は今後、運輸審議会へ同事案を諮問、その際にパブリックコメントの内容について報告する。
コロナ下において首都圏の鉄道事業者で運賃の値上げを行うのは、東急の申請が初。一方で値下げに動く鉄道事業者もある。その一例が同じ「大東急」の血を引く小田急電鉄で、ICカード利用による小児運賃を一律50円に引き下げる。引き下げは3月12日から。小児運賃の引き下げは恒久的な措置とのことだが、そもそも小田急の鉄道運輸収入に占める小児運賃の割合はおよそ0.7%しかなく、値下げの影響は微々たるもの。大人運賃の引き下げはない、というところがミソである。
登戸駅~代々木上原駅間の複々線工事が完了し、沿線ではファミリー向け分譲マンションのほか、昨今は賃貸マンションの開発も手がけるようになっている。新宿、下北沢、町田といった繁華性が高いエリアから、江ノ島・箱根といった有名観光地を抱える沿線特性を生かし、ファミリー層を呼び込み、路線間競争を勝ち抜きたいという思惑がある。既に地下化された下北沢駅上ではホテルや商業施設などの再開発が進捗、今年以降に小田急百貨店新宿店本館をオフィスビル・商業施設へ再整備するプロジェクトが本格始動する。小田急の思い切った戦略は果たして吉と出るか。