(提供日刊不動産経済通信)
法務省は9日、区分所有法改正の検討状況を内閣府の規制改革推進会議スタートアップ・イノベーションワーキンググループ(WG)で報告した。建替え決議の多数決割合(5分の4要件)は、単純な引き下げ案のほか、耐震性不足など一定要件を満たした場合に引き下げる案などを検討中。検討内容は多岐にわたり、国土交通省所管のマンション政策のあり方にも深く関わるため、WGは両省の一層の連携を求めた。
論点は大きく分けて、建替えと区分所有関係の解消の円滑化、区分所有建物の管理の円滑化、被災した区分所有建物の再生の円滑化の3点。5分の4要件は緩和の方針だが、少数者の権利保護や、4分の3の賛成が必要な共用部分の変更・規約変更との関係整理が課題。多数決で区分所有関係を解消する仕組みを導入し、建物及び敷地の一括売却決議、取り壊し決議を可能にすることも検討する。賃貸で専有部分に住む人の賃借権が建替え決議後も存続する(建替えに賃借人の合意も必要になる)ことから、建替え決議がされた場合に賃貸借契約を終了させる仕組みも検討している。
このほか所在不明の区分所有者を決議の分母から除外する仕組みや、区分所有者の所在不明・管理不全状態にある区分所有建物に特化した財産管理制度の創設も俎上にある。被災マンションは、再建決議等の多数決割合(5分の4)の引き下げと、決議可能期間(現行1年以内)の延長を検討する。
区分所有法の建替え決議の緩和の検討は、21年7月閣議決定の規制改革実施計画に盛り込まれた。法改正には、法務省の法制審議会での議論が必要。WGメンバーからは「来年春に法制審議会にかけ、次の国会(24年通常国会)で改正法案提出を」との声があった。