社会環境の大きな変化をチャンスに転換 新たな「価値」を生み出す舞台を創造 不動産大手各社の年頭所感

コロナ禍が3年目に入った。変異株の感染が拡がり始めたものの、ワクチン接種の普及や経口薬の開発などで過去2年に比べると耐性ができてきたため、経済活動の力強い再開に期待が高まる。不動産・住宅業界各社のトップが語る年頭所感を連載する。 (三井不動産 三菱地所 住友不動産 東急不動産ホールディングス 東京建物 野村不動産ホールディングス 大京 長谷工コーポレーション 森ビル 森トラスト 積水ハウス 大和ハウス工業)

  •   菰田正信・三井不動産社長 今年は、「東京ミッドタウン八重洲」「ららぽーと福岡」「50 ハドソンヤード(ニューヨーク)」「ららぽーと BBCC(マレーシア)」など、国内外で新たなフラッグシップ物件が竣工・開業予定だ。ウィズコロナが続く状況下においては、昨年策定した「三井不動産9BOX感染対策基準」を各施設で徹底し、「感染拡大の防止」と「施設運営の正常化」の両立を図っていく。また、くらしやビジネスライフにおいて、コロナがもたらした不可逆的な変化を的確に捉え、リアルとデジタルを最適に組み合わせて「リアル・エステート・アズ・ア・サービス」を提供していく。ポストコロナ時代への移行、地球規模で生じる気候変動など、時代の大きな転換点のなか、社会環境の大きな変化をしなやかに受け止め、それをチャンスに変えて、街づくりを通して、持続可能な社会構築の実現に貢献していく。
  •  吉田淳一・三菱地所社長 大きなパラダイムシフトの過渡期にある中で、いかに時代の変化を柔軟にチャンスと捉え新たな挑戦をしていくか。「長期経営計画2030」3年目となる22年、骨太の企業グループへの変革を加速していく。22年は、4月に新丸ビル開業15周年、9月に丸ビル開業20周年を迎える。約20年前から今日まで、多様性のあるまちへと転換を図るべく、ハードとソフトの両面からまちづくりに取り組んできた。昨年には、デジタル化の先にある新しい暮らしとまちづくりを目指して「三菱地所デジタルビジョン」を策定したが、不動産領域における幅広い事業ポートフォリオや顧客接点などの経営資源を生かしながら、時代や社会のニーズを先取りして捉え、既存領域・新事業領域ともに「来たくなるまち」づくりを推進するとともに、まちとして更なる進化を遂げるべく、オン・オフラインの双方で“人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台”を創造していく。
  •  仁島浩順・住友不動産社長 昨年は、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が長引き、景気は上向きつつも一進一退の一年となった。足元では、出社再開など人流も回復し始め、正常化が期待される一方で、世界的な供給網の混乱、新変異株の感染拡大懸念など、先行き不透明な情勢が続いている。こうした状況下で、当社の今年度業績は、主力のオフィスビルのみならず住宅関連部門の貢献により、経常最高益達成がはっきりと見えてきた。グループ役職員の皆さんが一丸となり奮闘していただいた成果が着実に出ている。4月からは新中期経営計画が始まる。コロナ禍で培った創意工夫の結果が試される時でもあり、全部門で高い目標を掲げ、グループの「総合力」で再び力強い成長を実現すべく邁進して欲しい。今年も一年間、明るく元気に頑張ろう。
  •  西川弘典・東急不動産ホールディングス社長 昨年発表した2030年度までの長期ビジョンでは全社方針として「環境経営」「DX」を掲げている。環境経営に関して言えば、再生可能エネルギー事業は昨年10月末時点で開発中を含めて70カ所、定格容量は1253MWと、すでに原発一基分を超える発電能力を確保している。この当社グループの業界トップクラスの実績とアドバンテージを生かして更なる事業拡大に取り組んでいきたい。また、住宅事業では分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」で「環境先進マンション」に取り組むことにしている。資金調達においても昨年、社債に占めるESG債の割合を30年度までに70%以上まで高めるといったポリシーを開示した。引き続きグループ全体で環境に積極的に取り組んでいく方針だ。DXに関してもデジタルを活用し「お客さまにどんな価値を提供するか」を念頭に、東急リバブルの「マンション価格査定AI」などDXの活用を進めている。
  •  野村均・東京建物社長 賃貸オフィスにおいては、一部エリアにおける空室率の上昇や平均賃料の低下傾向が続いているが、リアルなコミュニケーションを重視し、出社率を戻している企業も一方で見られ始めている。また、働き方の多様化から、セットアップオフィスなど新たな需要が高まっている分野もあり、このような先行き不透明な時期をチャンスと捉え、様々な努力、工夫をしていきたい。分譲マンションにおいては、働き方やライフスタイル、価値観の多様化から、住宅ニーズの幅が広がっていることもあり、全般に好調な状況だ。住宅ローン減税の控除率引き下げ、コロナ変異株動向や原材料供給制約の影響による景気回復の不透明感から、住宅購入マインドの一時的な低下も懸念されるが、ZEHなどの省エネマンションや水害対策も含めた防災機能に優れるマンションなど、ブリリアならではの高品質なマンションの提供を通じて、多様化・高度化するお客様のニーズを着実に捉えていく必要がある。
  •  沓掛英二・野村不動産ホールディングス社長グループCEO 22年は、現在の中計の着実な達成とともに、新たな中長期経営計画がスタートする年である。特に2030年へ向け中長期的な「成長」と「学び」の意識を強く持ち、グループ挙げて「成長」に向け戦略的に取り組んでいく決意をする極めて重要な1年と位置付ける。プラウドをはじめとする住宅に加え、芝浦一丁目プロジェクトなど大規模都市開発案件の開発力の向上、海外事業の加速、サービスマネジメント分野での戦略性を持った事業成長などに役職員一丸となって取り組んでいく。
  •  深谷敏成・大京社長(兼オリックス不動産社長) 大京を含むオリックスグループの不動産事業部門では、「脱炭素化」「環境配慮」「安全・安心・快適性」「地域共生」の4つの重点キーワードをテーマに取り組みを進める。分譲マンション開発事業では、原則「ゼッチ・マンション・オリエンテッド」以上の省エネ基準を満たす仕様の開発を推進して、住宅の長寿命化に向けた取り組みにも注力する。日本で一番多くのマンションを供給してきた企業として、開発・管理・流通のノウハウを生かし、環境性能の追求と地域の活力向上を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献する。また、業務の変革と効率化を図るDXに取り組み、各社・各部門の連携によるサービス変革で新たな価値創造を行い、顧客満足度の向上へつなげ、サステナビリティとDXを確実に加速する1年にしたい。
  •  池上一夫・長谷工コーポレーション社長 国内のマンション市場は、供給戸数の水準がコロナ前に戻る見込みで、不動産分譲事業の好調な推移に加えて、長谷工コミュニティや長谷工リフォームなどのサービス関連事業も大きく挽回した。環境面では、気候変動への対応方針を制定し、建設現場への再生可能エネルギー導入と環境配慮型コンクリートの採用提案を始め、環境配慮技術の開発を含めた脱炭素の取り組みを推進していく。DXでは、グループ全体でデジタル化に取り組み、設計のBIMを補完するデータベース構築などの環境整備や作業所業務のDX推進で、生産性向上による競争力向上へつながるよう、期待している。今年のキーワードは、「格致果敢(かくちかかん)」とする。物事の本質を追求していく「格致日新」と失敗を恐れず決断する「進取果敢」を組み合わせており、積極的にチャレンジしていって欲しい。
  •  辻慎吾・森ビル社長 森ビルにとって22年は「未来を創る、特別な時間」になる。22年は、2つの意味で我々にとって非常に重要な年だ。1つ目は、「虎ノ門・麻布台プロジェクト」と「虎ノ門ヒルズエリアプロジェクト」の23年の街開きに向けた「特別な時間」としての位置付けだ。これまで、我々が一心不乱になって創り上げてきたものを最高の形で開花させるべく、全てのことを、時間内に、高いクオリティで、確実にやり遂げなければならない。2つ目は、直近の未来だけでなく、30年後、40年後という「その先の森ビルの未来」に向けても22年が重要な年になる可能性が高いということだ。人々の価値観、ライフスタイル、働き方などが大きく変化している今こそ、次の未来を切り拓く絶好のタイミングだ。都市の本質や人間の本質を見極めながら、社会の変化やテクノロジーの進化などを組み込んだ都市づくりを、森ビルらしく仕掛けていく。
  •  伊達美和子・森トラスト社長 オミクロン株の発現など、22年も先行きの不透明な状況が続くことが予想されるが、森トラストグループは事業環境の変化を成長の機会と捉え、前向きに将来への布石を打っていく。渡航制限やコロナ禍の観光スタイルの浸透によって、結果的に国内旅行に目を向ける機会が増えたことは、日本のさらなる魅力を発信する好機と捉えている。また、働く場所、住む場所、憩う場所の境界が曖昧化しつつある今般の状況を受け、当社グループは全国のリゾートホテルにワーケーション拠点を整備するなど、国内観光の新規需要創出に取り組んでいく。さらに、今般高まりを見せているウェルネスニーズは、ビジネスや観光を含めたあらゆる領域において重要なテーマだ。今年はウェルネス事業をより加速させ、豊かな暮らしを実現する商品やサービスを全方位的に提供していく。
  •  仲井嘉浩・積水ハウス社長 21年度はグループ全体でベクトルを合わせ、各事業でそれぞれ高いパフォーマンスを発揮した。現在の日本では、しっかりした性能を確保した長期的に良質な住宅の供給が必要だ。当社は創業以来60年以上にわたり耐震性について研究を重ね、断熱性能もいち早く取り組んできた。「美しさ」も良質な住宅ストック、つまり「まちの財産」だと考える。「5本の樹」計画による生物多様性を実現した庭も立派な財産であり、これら「まちの財産」となる住宅ストックをもっと増やしていきたい。良質な住宅ストックの形成と循環を実現するため、使命感を持って取り組んでいく。
  •  芳井敬一・大和ハウス工業社長 変化の厳しい状況で新年を迎えるにあたり、社員の皆さんに三点お願いがある。一つは仕事を楽しむこと。業務に真剣に、楽しみを見いだしながら取り組むことが成長の源泉だ。役員・管理職の方々は部下や後輩が成長できる環境を整え、不透明な時代を生き抜く力を身に付けられるようにしてほしい。二つ目は、夢を抱くことだ。未来を描く夢を抱き、日々の業務に邁進してほしい。お客様や取引先も含めて皆さんが幸せになることを重視している。三つ目は期待に応えることだ。行動第一主義を徹底してほしい。環境は日々刻々と変化していくが、これからも大切にすることは創業の原点「社会に役立つ事業の展開」だ。(日刊不動産経済通信
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