都市機能更新に需要は追い付くのか―福岡マーケットを支える官民の力(下)
旧大名小(21年11月、三輪記者撮影)
都市機能更新に需要は追い付くのか―福岡マーケットを支える官民の力(上)

地域スブレッドのない好調な売買市場
今後の都市発展へは客観的視点が必要


 他都市に比べて軽微とはいえ、コロナ禍によりオフィスやリテールはリーシング市場で一定の打撃を被り、ホテルの運営は厳しい局面に向き合った。だが、不動産の売買市場は総じて好調だ。福岡市は5月に人口が160万人に到達し、年間1万人程度の人口増加が続く。加えて行政は、都市機能更新やスタートアップ企業育成、国際金融拠点の誘致などに積極的なことから、今後の成長性に期待値が高い。

天神(21年11月、三輪記者撮影)


 コロナ禍で日本の安定的な不動産市場が評価され、海外からの投資資金が豊富に入るなか、東京ではオフィス、レジ、物流施設などは低利回りでの取引きが多く見られる。そのため、福岡市場へ東京より高い利回りを求めるプレーヤーの視線が注がれている。「東京都心における物件利回りに対し、福岡では+1~2%程度の利回りを期待するプレーヤーが多いが、土地価格の高騰、建築費の高止まり、賃料単価の上昇余地を背景に現状は地域スプレッドが小さく、結果的に東京のファンドが買えないというケースがある」(玄海キャピタルマネジメント深野政治副社長)。地域分散需要や成長性への評価から買いニーズは非常に強いが、ある業界関係者によると「福岡市では七社会をはじめキャッシュリッチな事業者が不動産を保有していることが多く、売りニーズが発生しづらい。だが、本業が傷んだ企業の中には経営方針再考と併せて、売却する物件を検討しているという話もある」という状況で、低い流動化のなか多くの投資家が機会をうかがう。
 最も過熱感を帯びているのは、需要が大幅に拡大している物流施設だ。受け皿となる物件が少なく、東京や外資系の物流開発事業者による大型の開発案件が増加している。CBREの調査では、福岡県の空室率は2019年の第2四半期から0.0%で推移し、賃料においては、従前「3000円の壁」と呼ばれ賃料上昇が見込みづらい状況から一転、新築物件では4000円/坪の事例が出始めた。開発エリアにも広がりが見られ、福岡市内近郊エリアでは、福岡IC周辺から北に約10㎞の古賀IC周辺へ拡大、九州全域をカバーする物流拠点である佐賀県鳥栖エリアは福岡県筑紫野IC周辺へと拡大している。なかでも、香椎浜JCから分岐し、福岡高速6号線として約2.5㎞延伸したアイランドシティでは、開発用地の過熱した入札が見られた。福岡市が公募した約4万㎡の2区画について前出の高田氏によると、最低売却価格は約36万円/坪であったが、結果的に東京建物を代表とするグループが約100万円/坪、ニトリが約62万円/坪という高額で落札し、関係者を驚かせた。

博多駅筑紫口(21年11月、三輪記者撮影)


 物流施設については、しばらく旺盛な需要に支えられた開発と賃料上昇が見込まれる一方、福岡市中心部でのオフィス等開発用地の高騰には、多少の一服感が見られる。「福岡のマーケットが見込む賃料水準とかけ離れた土地価格の高騰が続いていたが、地に足の付いた収益性を見直すような潮目の変化が見られる」(玄海キャピタルマネジメント原昌康九州事業部長)。大規模開発に沸く福岡圏だが、豊かな街づくりに資する投資を目指す地元プレーヤーは、自らの首を絞めかねない地価の高騰に冷静な対処をし始めた。
 福岡市は国際金融拠点を目指し、アジアはもちろんのこと、GAFAMといった欧米の巨大企業を誘致したい構えを見せる。新築のオフィスはそれら企業に対応可能な仕様を備え、一部では、海外から訪れる高所得ワーカー向けのレジにも開発が及んでいる。こうした物件にどれほど需要が追い付くのか。福岡の挑戦が成就するには、都市の力を客観視する目とバランス感覚が重要となる局面を迎えている。

2021/12/5 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー
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