新時代の管理運営を探る53 20年近く前に<地球温暖化対策に取り組んだマンションデベロッパーの康和地所(下) 飯田太郎(マンション管理士/TALO都市企画代表)
マンションタイムズ

新時代の管理運営を探る53 20年近く前に<地球温暖化対策に取り組んだマンションデベロッパーの康和地所(上)より続く

 民事再生法申請の3月前、08年7月に同社の「次世代ストック型集合住宅の提案」(図参照)が国土交通省の平成20年度(第1回)超長期住宅先導的モデル事業に採択された。このモデル事業は、07年5月に自民党が発表した「200年住宅ビジョン」を具体化したもので、その考え方は長期優良住宅制度として定着している。
「次世代ストック型集合住宅の提案」は、事業としては陽の目を見なかったが、そのコンセプトは「従来30年前後で建て替えられていた住宅を100年、200年と欧米並みに寿命を延ばすことによって確実に国民の『生活の質』を向上」で、「建物を新築する行為には大量のエネルギーが投入され、そして大量のCO²が放出される。『はじめに良い家を建てること』によって、不必要な解体・新築行為を減らしていくことは、我が国全体の省エネルギー化・CO²削減効果につながる」というものである。ソフト技術ついても「住宅を使いこなす、住みこなす居住者の意識の改革」を重視。居住者が断熱の仕組みを理解し、それを生活に生かすために熱環境体験室(体感ルーム)を設置するとした。
 歴史にIfは禁物だというが、康和地所が存続していれば、マンションの温暖化対策は現在とかなり違うものになり、マンション事業と業界も別の発展をしていただろう。


築18年経過した外断熱マンションは
まだしばらくは大規模修繕工事が不要

 首都圏における最初の外断熱マンションである「L北斎通り」は、今年築後18年を迎えた。内断熱方法による一般のマンションの場合、築10年目に行う1回目の大規模修繕工事を終え、2回目の工事の準備を始める頃である。

 「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」*を読んで、外断熱マンションを探していたところ「L北斎通り」に出会ったという区分所有者の横山智子さんは「期待通りの住み心地で、前に住んでいた普通のマンションに比べると冷暖房費がかなり削減できた」という。康和地所の社員としてヨーロッパのマンションを視察した一級建築士の小松宏多氏は、「L北斎通り」の管理組合の修繕委員を務めている。「管理会社が建物診断をしたところ、当分の間、外壁等の修繕工事は必要ないとの結果を得られた」と小松氏。外気を遮断することで気温の変化によるコンクリート躯体の伸縮や、中性化の進行を防ぐことが実証されたことになる。
 康和地所の社長だった夏目氏は、現在、不動産流通を手掛ける千代田地所の会長職とともにNPO法人外断熱協会の常務理事を務め、ライフワークして外断熱マンションの普及に取り組んでいる。
 今後、ZEHマンションの新規分譲が進んでも、675万戸を超える既存マンションについては外断熱等の温暖化対策が進む見通しは、現在のところほとんどない。国際公約であるCO²排出量削減目標を実現するためには、流通市場で内断熱と外断熱を分かりやすい形で区分する仕組みと、管理組合が外断熱改修をはじめとする温暖化対策に積極的に取り組むための方策を考える必要がある。
 *「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」(1999年刊、著:赤池学。金谷年展、江本央) は、内断熱マンションの問題点を指摘、外断熱の良さを紹介している。 
 ※夏目康広氏が康和地所を立ち上げ外断熱マンションの供給に取り組んだ経緯は、山岡淳一郎著「外断熱は日本のマンションをどこまで変えるか」に詳しい。

2021/12/5 月刊マンションタイムズ

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