政府は、温室効果ガス削減目標について、2030年までに「13年比46%減」とする方針を掲げた。2050年までに温室効果ガス排出ゼロの脱炭素社会に向けて、住宅業界においても環境配慮型の住まいが求められる。海外企業のテナントビルや投資用物件でSDGs(持続可能な開発目標)、ESG(環境・社会・企業統治)投資に関心が向いていることは、すでにご存じであろう。地球温暖化対策のためには、一般国民が購入・賃借し暮らす住宅が流通する過程で、不動産業界の役割が重要になってくる。
ヨーロッパでは10年前に
省エネ性能広告表示を義務化
この10年ほど、フランスやイギリスなどを訪れた人なら、不動産事業者の店貼り広告でカラーバー表示を目にしたことがある人も多いだろう。フランスでは、A(緑)~G(赤)の9段階の色分けのカラーバーが各不動産物件に必ず示されている(写真1)。これは、EPC(Energy Performance Certificate)と呼ばれるもので、建物の省エネ性能評価を客観的に示す指標だ。売買や賃貸など取引されるすべての不動産に表示義務が課されている。
欧州連合(EU)は、京都議定書(1997年)をきっかけに、いちはやく建築物・住宅の省エネ性能向上に取り組んできた。「建物のエネルギー性能に関する欧州指令」(Energy Performance of Buildings Directive:EPBD)」によってエネルギー性能の算定方法と評価方法の確立、仲介時の表示義務付け、広告表示義務付けを段階的に各国に求めてきた。2002年および2010年に、建物のエネルギー消費の算定方法やエネルギー性能を広告に表示する枠組みを定め、EU加盟国に対して、それぞれの国の実情に応じた不動産広告への省エネ性能表示の義務付けを促した。
各国の取り組み時期には差があるものの、最も早かったフランスでは、2006年EPC制度導入、売買・賃貸時表示義務化、2011年には不動産広告表示の義務化を法律で定め施行した。(不動産広告表示義務化は、2012年イギリス、13年スペイン・ポルトガル、14年ドイツ、15年オランダ等、主要国で義務化済み)。これは、広告表示だけに限った話ではない。住宅の売買・賃貸ともに、消費者に示し渡す書類に、省エネ性能に関する詳細な書類の添付また仲介時には、不動産事業者にその説明も義務付けられている。
住宅情報提供サイトに光熱費の表示を (有)studio harappa 代表 村島正彦(中)へ続く
2021/5/12 不動産経済Focus & Research