個別不動産へのガバナンスにおける
PM・FMの意義
(1)BMにおける品質とコストのバランス
清掃、警備、設備管理、衛生管理などBM業務において、ある対象になすべき品質(回数、出来栄え等)に対して適切なコストがある。「安かろう、悪かろう」でも、「やりすぎ」でもダメで、「品質は悪く、コストが高い」という最悪の場合もある。メンテナンス業務のデータを蓄積して、それをベンチマークとして利用することにより、品質とコストをバランスさせるためのガバナンスが必要である。
(2)CMにおけるライフサイクルマネジメント
CM業務における適切なガバナンスにより、外壁の塗り替え、空調等の機械設備などの大規模修繕を行えば、建築から取り壊しまでのライフサイクルコスト(LCC)を適正化させ、耐用年数を伸ばし、CO2を削減することができる。これをライフサイクルマネジメント(LCM)という。
(3)PM・FMの体制における利益相反の排除
不動産ファンドにおいて、保有物件の元の所有者と当該ファンドのAMとの関係、AMとPMとの関係、PMとBM、CM、LMそれぞれの業務を担う会社との間には、基本的には利益相反の関係がある。これらを同一の会社が担当すると、ガバナンスが効いていない、と外見上判断され得るので、それを反証する必要がある。
不動産に関する認証制度
認証制度は、個別の不動産にESGを配慮している一つの大きな証左になる。
総合環境性能に関する認証制度としては、CASBEEやLEED、DBJグリーンビルディング認証があり、「S」に関しては、WELL、CASBEE-WOという認証制度がある。「G」に関しては、ISO9000(品質マネジメント)、ISO1400(環境マネジメント)シリーズがあり、2018年新たにISO41001(ファシリティマネジメント)が始まった。ISO41001は2021年8月にGISQ41001(日本工業規格)になり、今後、公共施設のPM・FM発注の際の入札要件になるとみられている。
おわりに
PM・FMについては、業界全体の閉鎖性からデータの蓄積や公開が今まではあまり進んでいなかったが、今後はこれらが強く要求されるようになるだろう。データの公開が少ない物件は投資家がESG適格と認めないからである。また、近年BIMやCIMが発達し、建築時から維持管理時、取り壊し時にわたって、三次元でのESGデータの収集、利用が可能になりつつある。
以上、ESGによる新しい意味付け、環境の変化により、PM・FMは今後ますます重要視されていくものと思われる。
2021/10/20 不動産経済Focus&Research