新時代の管理運営を探る51 年々成長する植栽の力で マンションをイメージアップ(上)
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マンション管理士/TALO都市企画代表
飯田太郎

マンションの共用部分というと、土地、建物、設備等に関心がいきがちだが、植栽も重要な構成要素である。新築マンションの販売パンフレット等には、建物を飾る豊富な樹木や花が描かれ、高級感や落ち着いたイメージを演出していることが多い。また、自治体の中には、条例や指導要綱等でマンション建設時に緑化を義務づけているところもある。マンションという大きな建物を緑化することが、地球環境保全に有効であると考えられているからである。マンション生活と地域の環境に大きな影響を与える植栽の役割と維持管理について考える。

 植物は生き物である。放っておいて思い通りの風景を形成するとはいかない。特にマンションの植栽は限られた土地、環境の中で育てていかなければいけないが、適切にメンテナンスされることで、理想に近づくことが可能となる。新築当初は同じような植栽でも、築数年が経過するとともに手入れの良し悪しの差が歴然としてくる。実際に築10年を超えたマンションの植栽の状態は二極化しているといえる。メンテナンスや改修等が資産価値向上につながっているマンションがある半面、適切なメンテナンスが行われず、イメージの低下につながるマンションもあることに留意する必要がある。

植栽管理を居住者自ら行うことで
コミュニティの形成にもつながる

 建物や設備の維持管理と同じように、植栽管理も管理会社を通じて造園会社に委託するマンショ
ンが多いが、居住者が中低木の剪定等の軽作業や花壇づくり等を自分たちで行うところもある。で
きる範囲で植栽に関わることは居住者同士の親睦やコミュニケーション促進にも役立つ。テレワークが普及し、在宅時間が増えた居住者の気分転換や、リタイア組等の健康維持に効果的なこともある。植栽管理を通じて居住者が植栽に対する、みる目を養うことも可能だ。地域の公園の樹木や街路樹等の場合は、樹木の剪定といっても、枝が繁茂して電線や周囲の建物の邪魔にならないように
枝を払うだけのこともある。経費節約のために造園職や植木職に頼まず、土木工事のついでに剪定
を依頼することもあるようだ。これでは樹木のためにも地域環境にも良いとはいえない。
マンションでも限られた土地の中に生長の早い樹木を入れる等、バランスを考えない設計がされ
た結果、維持管理が行き届かなくなっている例もある。日本には古くから枝を大きく張るような樹木を、上手に剪定することで小さく仕立てているような技術もある。高木、中低木、灌木、草花や、庭石等を取り混ぜて小庭園のような演出をすることもできる。
 日本の庭づくりは、イギリスをはじめヨーロッパのガーデニングにも大きな影響を与えたとい
う。庭づくりの伝統をうまくマンションにいかすことができればマンションの評価も上がり、居住
者の励みにもなる。花や緑については独自の意見を持つ居住者も多い。樹木や花の種類についての好き嫌いもある。また、樹木が大きく育つことを楽しみにする人がいる半面、虫や落ち葉のせいで掃除が大変、枝が窓に迫り迷惑といった意見もある。維持管理等について決まったルールがないう
え、植物についての意見の違いが居住者同士のトラブルになることもある。植栽管理での意見の違いが感情的な対立に発展し、管理組合運営に影響を与えるようなこともある。
 区分所有者・居住者が自分たちでマンション管理の実務を担うことの難しさを象徴しているとも
いえる。見方を変えれば植栽管理は、管理組合や居住者がマンション管理を主体的に担うための訓
練の場にもなる。植栽管理で大切なことは誰が手入れをするにしても、樹木類をどのような姿、形にデザインをするのか、四季それぞれの演出をどうするのかといった、基本方針を考えることである。マンションとして何を大事ととらえるか、デザインをはじめとしたイメージが共有されている
と、検討もスムーズに進みやすい。販売パンフレットには、10数年経過し樹木が育った状態を想
定した設計者のデザインコンセプトが見られるので、それを踏襲するのもいい。全体のイメージが共有されていれば、どこに費用をかけ、どこを節約するか、ということも考えやすくなる。

新時代の管理運営を探る51 年々成長する植栽の力で マンションをイメージアップ(下)へ続く

2021/10/5 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ

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