新生銀行が病院開発型案件へソーシャルローンを実行

 新生銀行は、医療法人医誠会に対し、560床の大型新病院「医誠会国際総合病院」の建設費用を資金使途として、総額50億円の「新生ソーシャルローン」を実行した。同銀が、病院開発型のコーポレートローンに対してソーシャル評価を行うのは初めて。大阪市水道局扇町庁舎跡地に建設される新病院は、救急搬送を含む急性期および高度急性期医療を提供するとともに、地域包括ケアシステム構築など地域の医療機関との連携を深め高まる医療需要へ対応する。さらに、大阪市の「扇町用地活用方針」に沿って、劇場等の文化施設や交流促進に資する施設を一体開発し、街の活性化を図る。同銀は社会的意義の観点からこれらを総合的に評価した。

 新生銀行が実行するソーシャルローンは、特定の社会課題への対処やその軽減に資する事業、および社会的インパクトをもたらす事業に資金使途を限定したローン。適格性の評価については、新生ソーシャルファイナンス・フレームワークにおいて定めており、これは2021年4月にイギリスのLoan Market Associationなどの団体が発行したソーシャルローン原則とも適合する。新築する「医誠会国際総合病院」は、医誠会病院(大阪市東淀川区)と城東中央病院(大阪市城東区)を統合し、大阪市北区に移転する計画で、背景には両病院の建物老朽化への懸念があった。15年以上前から候補地を探した結果、元扇町庁舎南側用地売却に関する開発事業者募集プロポーザルに係る事業予定者に決定した。新生銀が医誠会に実行したソーシャルローンは、全額が新病院建設費用に紐づけられ、同会が掲げる患者中心主義、断らない救急医療の継続に加え、統合により新設される小児・周産期医療の提供、訪日外国人への医療対応など、必要不可欠な社会サービスを支える施設へ投資を行う。

 「医誠会国際総合病院」(大阪市北区南扇町7-1、1-1)は、大阪メトロ堺筋線扇町駅から徒歩3分に建設中で、2023年10月の竣工を目指す。事業主はヒューリック、医療法人医誠会、一般財団法人仁厚医学研究所の3者共同で、事業予定者決定時に公表された総事業費は80億円。2021年6月に着工した同計画は、市道を挟んだ2区画で構成され、敷地面積9154.20㎡(2769.14坪)、北棟地下1階地上9階建て、南棟地下1階地上15階建て、延床面積計約6万3252㎡(約1万9133.73坪)。病床は全室個室仕様で560床を予定する。付帯施設として、北棟の1階部分には、文化創造の拠点となる150席~200席の劇場「LIVEキューブ」、ワークショップや物販用途で利用される多目的貸室「COキューブ」が設けられるほか、南棟1階部分には交流促進拠点として、健美カフェやキッチンスタジオ等が併設される見通し。同事業は官民が連携するPPP事業で、ヒューリックが土地の大半を取得し医誠会へ長期賃貸する借地スキームを採ることで、同会が土地取得に関する資金を拠出することなく病院建物、手術機器等の本業の設備投資に資金を集中することを可能とした。

 新生銀は、2010年のヘルスケアファイナンス部創設以来、同分野におけるリスク分析力、業界におけるプレーヤーのマッチング力などの専門性を高めてきた。引続き、地域で大きな役割を担う病院施設や、供給不足が指摘される周産期・小児医療、緩和ケア分野等に取り組む施設が抱える課題に対し、ファイナンスアレンジの側面から積極的な支援を進めていく。

不動産経済ファンドレビュー

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