人の死の告知に関するガイドラインーMARKS花原氏・大島てる氏に見解聞く

 心理的瑕疵等の不動産(事故物件等)の取引に掛かる調査や告知のあり方などについて定めた「宅建業者による人の死の告知に関するガイドライン」が8日午後発表された。国土交通省が5月に示したガイドライン案ののち、パブリックコメントを経て公表されたもので、基本的には案の内容を踏襲しつつ、取扱の明確化が図られている。同ガイドラインについて識者はどう見るか。事故物件の売買・賃貸仲介業務や仲介サイト「成仏不動産」を運営する株式会社MARKSの花原浩二代表と、事故物件サイト「大島てる」を運営する大島てる氏に話を聞いた。

MARKS 花原社長

 花原氏は「宅地建物取引業者の立場から、『告げなければならない内容』『告げなくても良い内容』と明確になった為、事故物件の取引が円滑に進むことに繋がるのではないかと期待している」と評価する。花原氏はガイドラインの中で、「買主・借主から問われた場合は、調査で判明したことは告げる必要がある」と書かれている点が、非常に重要なポイントであると捉える。「事故物件に抵抗のある方は、自分で責任をもって質問することで判明している事故の内容を確認することができるし、逆に全く気にしない人はそのまま契約をすることも可能ということになる。この点から考えると、本ガイドラインは売主・貸主、買主・借主、宅建業者の3者にとってバランスのとれた内容になった」(花原氏)と考える。

 一方、事故物件サイト「大島てる」を運営する大島てる氏は、ガイドライン策定を受けてどう思っているのだろうか。大島氏に聞くと「ガイドラインは『案』から修正されてはいるが、サイト『大島てる』との関係では大差ない。つまりガイドラインは『大島てる』と基本的に無関係である、ということに尽きる」と冷ややかな見方を示した。

 現実に即してどう見ればいいか

 宅建業者は事故などの有無や内容について、ネットを駆使してまで調査を行う必要はなく、売主・貸主が示した告知書の範囲内で回答すればいい。ただし、買い手や借り手から問われた場合は、告知の対象となる。現に事故物件サイトは存在し、買い手や借り手はネットで情報を得ようとする。そのため、結局のところは宅建業者は告知をして行かざるを得ない状況になるのではないだろうか。

 花原氏は実際に事故物件を取引している経験から「『全体の70~80%程度の人が事故物件について抵抗がある』というデータから考えれば、結局のところは宅建業者は告知しつづけることになると思うし、それが本来あるべき不動産取引きの形だと思う。ネットの情報についても、信憑性に疑問はあるものの掲載の情報を信用した取引がなされることになると思う」との見方。

大島てる(大島てる氏提供)

 大島てるにもこの点について問うたところ、「ガイドラインに従えば『訊かれたら告知する必要がある』→『しかし,知らないから告知しようがない』←『大島てるを見ればわかるが,そこまでする必要はない』という対応が通用するように解釈できる。また『大島てる』情報の真偽を確認する必要もないとのことであるから、宅建業者が『告知をしていかざるを得ない』とまでは思えない」と見解を示した。

 事故物件の流動化に繋がるか

 売買には告知を伴うので不動産としての評価が下がり、一方で賃貸は3年経過で告知義務がなくなるので家賃が上昇(維持)し、「安く買って、高く貸せる」という可能性もあるが、その点はどうか。

 花原氏は「告知義務がなくなったとしても、借主側に事故内容を確認する権利を持っている以上は、告知義務の3年ピッタリ過ぎたら価値が上昇(維持)するわけではないだろう。もっとも、忌避感のない一定数の方にとっては多少の価値上昇の効果はあるかもしれないが。年数によって忌避感が薄れることはあるので、事故物件投資に注目が集まることにはなっていくと思う」とした上で、「これまでは、人が入れ替わったら告知しなくてよいというような迷信を信じている人が多くいたことを考えると、本ガイドラインを受けて、告知義務が明確になり、更に事故内容を聞かれたら答えないといけない義務が出てきたため、市場における事故物件の数が増える可能性がある。その点で、事故物件をマッチングする需要は増えていくだろうし、投資家目線でみてもメリットの多い投資であることを考えると、今後はマーケットは拡大していくのではないか。コロナ禍が終息することで海外からの人の流入が増えるので、より加速しやすい環境が整ってきている」と、事故物件の流通促進へ期待感を示した。

人の死の告知に関するガイドライン サマリー(国土交通省公表資料より)

調査について

<調査の対象・方法>
・宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、告知書等に過去に生じた事案についての記載を求めることにより、媒介活動に伴う通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。
・宅地建物取引業者は、原則として、自ら周辺住民に聞き込みを行う、インターネットサイトを調査するなどの自発的な調査を行う義務は無く、仮に調査を行う場合であっても、亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮し、特に慎重な対応が必要。


<調査に当たっての留意事項>
・ 宅地建物取引業者は、売主・貸主による告知書等への記載が適切に行われるよう必要に応じて助言するとともに 、売主・貸主に対し、事案の存在について故意に告知しなかった場合等には、民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましい。
・告知書等により、売主・貸主からの告知がない場合であっても、人の死に関する事案の存在を疑う事情があるときは、売主・貸主に確認する必要がある。

告知について

【原則】
宅地建物取引業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼ
すと考えられる場合には、これを告げなければならない。

【告げなくてもよい場合】
①【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)。 ※事案発覚からの経過期間の定めなし。
②【賃貸借取引】取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後
③【賃貸借・売買取引】取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した①以外の死・特殊清掃等が行われた①の死 ※事案発覚からの経過期間の定めなし

【告げる必要がある場合】

・告げなくてもよいとした①~③の場合でも、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は告げる必要がある。
・告げなくてもよいとした①~③以外の場合は、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、告げる必要がある。
・人の死の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。

・ 告げる場合は、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因及び特殊清掃等が行われた場合はその旨を告げる。

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