コロナショックと不動産市況―日本経済2021&金融・不動産・観光の動向・展望と注目すべきポイント(下)―岡三証券 エグゼクティブエコノミスト 高田創
高田創氏

戻り切った株式市場


 コロナショックは何をもたらすのか―日本経済2021&金融・不動産・観光の動向・展望と注目すべきポイントに続く 

 現在の株式市場はコロナ危機前の水準よりも高くなっている。リート市場もそこまでではないものの、ボトムに比べれば戻ってはいる。バブル崩壊により時価総額1000兆円分の不動産が消失した。数字が大きすぎてピンときづらいが、日本のGDP(約500兆円)の2年間分に相当し、第二次世界対戦でもそこまでいかなかったと言われている。
 それに比べて、今回のコロナショックは異例なほど不動産にやさしい。長年不動産アナリストとして不動産市場に携わってきたが、石油ショック後もバブル崩壊においてもリーマンショックの後も、不動産は常に悪者で目の敵にされてきた。しかし今回は、金融緩和で金利を下げる、大幅な資金繰り支援、家賃支援給付金の支給、日本銀行によるリートやETFの買い入れなど、不動産市場、資産市場に対して非常に厚いサポートがされている。そのため、危機にはあるが価格が下がらない。というのも、コロナ7業種という弱者救済の名のもとに進められているからだ。 だが、不動産は個別性があり、地方と都市圏の格差はあるので、不動産価格の二極化は考えておく必要がある。

超低金利政策で企業収益は増大


企業収益と投資家への収益還元を見ると、企業収益が非常に高くなっている。その理由は利息だ。バブルピーク時の支払利息は約40兆円だったが現在は6兆円程度と利払いがかなりなくなった。その一方で配当は上昇している。数年前から資本家に富が集中する時代になっていたが、今回のコロナショックはこの格差を広げた。資本家がより儲かる、不動産や株式保有者がより儲かる状況になっている。
これを強めているのが超低金利政策で、マイナス金利が勝ち組と負け組を分けている。勝ち組は借りている政府と企業、負け組はそこに貸している金融機関と預金者(家計)。現在の状況は、金融機関と家計が国に税金を納め、企業に対して補助金を出しているようなものだ。ここまで企業が儲かっているのは金利がない状態だからと考えられるが、この状態が世界中に波及している中でどのように投資を行っていけばよいのか。

LED戦略 


 Lは長期(long)、Eは海外(external)、Dは多様化(Diversified)を意味する。金利が水没(マイナス)状況下で資産運用を行う場合、LED戦略を取ることでキャッシュフローの創出を狙える。例えば、金利はマイナスでも配当があるのは株式市場、金利はなくても賃料収入があるのは不動産市場。これだけ金利が水没していると株や不動産にお金を流す政策が選ばれていると考えられる。世界中の運用難民(投資家)にとっては、海外にフロンティアを探すか株と不動産に投資するしか生き残り戦略はない状況になってしまっている。
 2020年の2~3月は世界中がキャッシュに逃げる状況に陥った。緊急避難的に長期運用よりも手元の現金(Cash:C)、海外より自国(Domestic:D)回帰、多様化よりも債券などの基本(Basic:B)というCDB戦略にシフトしていた。だが、世界中の中央銀行と政府がこれでもかというほど金融緩和や財政サポートを行ったため金利水没状態が波及している。投資家にしてみれば、通常はリスクフリーの資産に逃げるのだが、逃げてもマイナス金利がついてしまう場合がある。4月以降は徐々にLED戦略に戻りはじめているが、2020年の状況は従来のLED戦略に比べ、ややキャッシュ水準を持ちながら、海外に戻りつつも一定の国内比率は保つ、期待水準を少し引き下げリスク抑制的な益も確保しながら、とある程度慎重さが見られる。
 改めてLED戦略を模索する際、「多様化」の側面で考えると、リート市場はまだ戻りきっていない、回復の余地が残っていると考えている。もちろんホテルや商業施設などかなり厳しい分野があるのでそこは考慮する必要があるが、市場は今後が期待できると考えらえる。 
 一方でカネ余り状態である企業もキャッシュフローがあるところを探しているため、コロナ7業種は2021年も厳しさが続くものの、金融財政的なサポートがある不動産市場にはお金が入りやすい状況にあることを認識しておく必要がある。

日本のリゾート市場


 コロナの7業種の一つなので業界のみなさんはご苦労が絶えないと思われる。ただ、アベノミクス前の800万人ペースが2018年以降は3000万人に達するなど急成長をした市場だ。コロナショックで大幅な後退は続いているが、日本への関心はまだ非常に根強く、インバウンドはサービス業の輸出であるとみなすと今後の基幹産業の一つだとも考えられる。
 日本の旅行市場規模は約28兆円、GDP約5%を占め、そのうちインバウンドは4.8兆円(約17%)。インバウンドが戻らない期間は、日本人の国内旅行回帰に依存し、国内旅行の事業構造改革が重要になってくる。訪日外国人の旅行規模は日本人の海外旅行規模とほぼ同等なので、海外に行く日本人を国内旅行にシフトさせることができればある程度は補える。国内旅行の課題である、平日の稼働率をいかに上げるかの解決等、日本のリゾート産業の構造改革が進めば、競争力のある産業になり得ると考えている。
現在、コロナ禍で非常に厳しい状況に置かれてはいるが、バランスシートは毀損していない。大企業を中心に余裕のある資本をコロナ7業種にうまく振り向けながら、良い循環で日本経済を活性化できるかがカギとなろう。従来は海外に依存するしかなかったが、今回は資産デフレには陥っていないので国内で循環が可能である。この特性をいかに活かせるか、広い視野で判断することが必要だと考える。(完)
(不動産経済研究所主催「年末セミナー」より収録)

2021/3/3 不動産経済FAX-LINE

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