土地代は1~2割上昇、バス便でも好調
首都圏郊外の戸建て分譲住宅市場は、木材価格や用地取得価格の上昇に伴い販売価格の強含みであるが、旺盛な需要に支えられ好調な販売状況が続く。コロナ禍で起きた新しい生活様式による需要の増加は、さいたま市など既存の人気地域にとどまらない。コロナ以前から郊外ベッドタウンとして一定の需要があった千葉ニュータウンや多摩地域などにも大きな追い風となっている。ただ、新生活様式の下での新たな戸建て住宅需要が生じるエリアが今後さらに遠隔地へ広がっていくという見方は少ない。
通勤利便性が良く商業施設も充実し、コロナ前から需要が高かった地域での販売の増加は継続している。埼玉県、千葉県、東京都で戸建て住宅事業を展開するポラスグループでは、さいたま市浦和区・大宮区など利便性の高い地域を中心に、事業地域全域で用地取得の競合が増えており、取得価格の上昇が続いている。夏以降の戸建て分譲住宅の販売価格は、一部で用地取得価格の上昇分が反映され土地分の販売価格が1~2割増した。加えて木材価格の高騰に伴い、上物価格も注文住宅を含め60万~100万円ほど上昇してきているが、「売れ行きは昨年同様極めてよく、用地取得の方が追いつかない状況にある」としている。
新たな需要の拡大エリアは一定範囲内に
コロナ禍による新生活様式が始まってから1年以上を経て、新たな住宅需要で伸びた地域と需要が及ばない地域の明暗が分かれてきた。首都圏の東側は、千葉県の印西市より南と東では木更津市と成田市などで地価が上昇したが、新生活様式の影響は限定的である様子。国土交通省は、「木更津市は木更津駅と東京駅を結ぶ利便性の高い高速バスにより、コロナの感染拡大前から一定の需要を確立していた。コロナ禍で一気に新たな需要が生じたわけではなく、以前と同じ傾向が順当に続いているとみるのが正確だろう。成田市も以前から、成田空港関連の就業世帯が住宅需要の中心を占めていて、影響は限定的とみる」との見解だ。
事業者側に目を向けると、2月に千葉・市原・木更津での受注拡大を目指し市原市への展示場進出と施工地域の拡大を行った千葉県の地域ビルダーの1社は、今のところ同地域で大きな手応えを掴めていないとする。首都圏の北側に目を向けると、埼玉県羽生市では、住宅生産振興財団が「アルコガーデン羽生岩瀬」(84区画)を昨年11月から発売中。最寄り(徒歩約15分)の東武伊勢崎線など2線の羽生駅から東京駅までの参考通勤時間は約1時間半。事業者は東京セキスイハイムとトヨタウッドユーホームで、参考坪単価は建築条件付き土地が15万円台から、分譲住宅が132万円台から。総額では約4000万円台前半になる。現在26区画が成約済みで当初予想通りの堅実な販売状況が続くとしているが、地元周辺エリアの需要が中心で、都心寄りからの新たな需要による目立った販売加速は現在のところ生じていない。
大和ハウス工業は昨今の情勢を踏まえ、首都圏郊外の戸建て住宅需要の拡大地域について、範囲をある程度見定めた。「東は千葉県印西市まではすでに順調で、成田市までは開発できる。西は小田急線・本厚木駅までは伸びしろがあり、それより西は厳しいだろう。例外的に、小田原駅は駅から徒歩圏であれば開発可能かもしれない。北はJR高崎線の桶川駅、東武東上線の若葉駅あたりまでだろう」と分析している。(日刊不動産経済通信)