日本建築医学協会は「誰でも豊かに健康になれる住環境特別大講演会」をオンラインで開催した。公衆衛生医師でトータルヘルス研究所所長の落合正浩氏、ドクターズホーム(千葉・木更津)社長の長谷川仁龍氏、同協会理事長の松永修岳氏が登壇した。
落合氏は、慶応大学理工学部の伊香賀俊治教授が実施した、住宅の断熱性の違いが、住宅内における人間の作業成績にどう影響するかという実験の内容をリポート。同じ設定温度の暖房でも、建物の断熱性能の違いで、実際の室内は上下で差が生じるとし、例えば平成28年基準は昭和55年基準との比較で2.6度ほど改善できると述べた。断熱性能が低い昭和55年基準は、暖房室と非暖房室の「室間温度差」が大きい。室間温度差が大きいと、血圧上昇や足元の冷えが生じ、住宅内における人の作業成績が落ちるとするが、温度差の改善で作業成績は向上するため、住宅の断熱性を高めることは重要であると結論付けた。このほか落合氏は、医師としての立場から、新型コロナウィルスのワクチンの有効性などについて持論を語った。
長谷川氏は、断熱性能に加え、気密性、計画換気、空調システムが必要で、これら4つのうちのどれが欠けても心地良い住環境の実現は難しいと述べた。日本の住宅の問題として、気密性の確保が技術的に難しいことから、計画換気が出来ず、PM2.5やほこり、カビなどが住宅内に入りこみやすくなることなどを挙げた。計画換気の目的は湿気、臭い、ほこりを外へ排出することで、換気の方法については、第三種換気が感染症リスクが最も少なくなる方法だと述べた。
松永修岳理事長は環境は無意識でも五感を通じて脳と繋がっており、環境を整えれば心が温かくなり力が出るとし「建築医学は予防医学だ」と述べた。具体的な実践策として、住宅の日当たりは大事だが、悪い場合は照明設備を工夫すること、床下に断熱材を施工して足元の冷えを防ぐこと、玄関吹き抜けの間取りは家全体を冷やすため、そのような間取りは行わないことなどを挙げた。
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