残置物処理モデル契約条項をどう見るか④ 最近の注目判例(上)コロナ下での賃料不払いが契約解除理由となるかー中島成弁護士

残置物処理モデル契約条項をどう見るか③より続く

近時の注目判例ー新型コロナ流行下での賃料不払いが解除理由となるか。~東京地方裁判所令和 2年10月15日判決~ 

【事案】

原告(賃貸人)は、被告(賃借人)に、本件建物を、期間 平成25年8月10日から平成27年8月9日まで、賃料等 家賃1か月7万円、共益費等1か月1万円の契約で賃貸し、その後合意更新していた。保証会社は、株式会社オリコフォレントインシュア(以下「オリコ」)。

 被告は、賃料等39万7237円を支払わず、オリコが立替払した。

 原告は、賃料不払いにより賃貸借契約を解除して、被告に対し、明渡しを求めた。

  被告は、外国人の在留資格の申請に係る申請取次行政書士として稼働してきたところ、新型コロナウイルス感染症の拡大により、令和2年1月31日以降の累次にわたる閣議了解等を踏まえて外国人の上陸拒否がされたことなどから、取扱業務が著しく減少して収入が激減し、同年2月以降ほぼ無収入の状態となった。

【裁判所の判断】

 原告の請求棄却。

(理由)

 建物の賃貸借契約において、催告期間内に未払賃料の支払がされなかった場合であっても、債務不履行の程度や、解除の意思表示に至るまでの事情等を考慮し、いまだ賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない事情があるときは、賃料不払を理由とする賃貸借契約の解除は信義則に反し許されない。

 新型コロナウイルス感染症の拡大及びそれが被告の業務に及ぼした影響に照らすと、少なくとも令和2年3月分及び同年4月分の賃料の未払については、酌むべき事情がないとはいえない。

 また、未払賃料については、すでにオリコによりその立替払がされているから、原告に損害が生じていたとしても、その損害額は、運用益等の僅かな金額に留まる。

 原告が未払家賃を催告した際にその振込先をオリコ名義の口座と指定したことからすれば、原告代理人による催告当時、原告はすでにオリコから保証債務の履行を受けていたことが強く窺われ、そうすると、そもそも催告解除の成否自体に疑義が生じることになる。

 さらに、オリコは、原告による本件賃貸借契約の解除の意思表示後も、被告による住居確保給付金の支給の申請に協力し、その給付金の振込みを受けるとともに、継続保証委託料を請求するなど、本件賃貸借契約の継続を前提とした行動をしていた。原告による本件賃貸借契約の解除の意思表示の当時においても、被告による賃料の未払にかかわらず、被告とオリコとの信頼関係はなお維持されており、オリコは、引き続き家賃収納代行業者ないし連帯保証人として、原告に対する賃料の支払(立替払)を継続する意思を有していたことが推認できる。

  原告と被告との間の賃料支払に関わる信頼関係は、被告とオリコとの間の信頼関係に依拠するところが大きかったものと認められるから、被告とオリコとの間の信頼関係が上記のとおりなお維持されていたことからすると、原告と被告との間の信頼関係もまた、なお維持されていたものと認めるのが相当というべきである。

  加えて、被告が、平成25年8月から令和元年11月までの6年4か月間は、家賃の支払を怠らず、本件賃貸借契約が3回にわたり更新されてきたことも併せると、原告と被告との間の信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない事情があると認められるから、原告による本件賃貸借契約の解除の意思表示は、信義則に反し許されないと解するのが相当である。

 なお、連帯保証人が催告期間内に未払賃料相当額を支払った場合であっても、賃借人自身は飽くまで賃料の支払を怠ったものとしてなお約定解除事由に該当することがあり得るが、そのような場合についても、上記判断は妥当するものと解される。

 よって、原告の請求を棄却する。

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