人口減と世帯数増
今後の社会保障の在り方にも影響
6月25日に総務省から「令和2年国勢調査人口速報集計」が発表された。その結果を見て私が感じたことを紹介しよう。
第1に総人口の変化を見よう。日本の総人口が減少を続けていることは周知の事実だが、今回の国勢調査でそれが改めて確認された。2020年10月1日現在の日本の人口は1億2623万人、前回調査の2015年より87万人の減少である。
私が改めて着目したのは、2015~20年の平均的な人口減少率が0.14%だったことだ。人口が減ると聞くと多くの人は、消費がその分減少して、企業の売り上げも減ると悲観的に考えがちだ。しかし、仮に日本全体の市場規模が人口の総数に比例するとしても(そんな単純な話ではないのだが)、市場規模の減少率は年平均0.14%に過ぎないことになる。この程度の減少であれば、企業努力でカバーするのはそれほど難しくないはずだ。「人口減少の経済的影響恐れるに足らず」、これが私の印象だ。
第2に、地域別の人口変化率を見よう。この点では、大都市圏と地方部の二極分化が続いている。2015~20年の間に人口が増えたのは、東京、名古屋、大阪の大都市圏と福岡、沖縄で、それ以外は、すべての道県で人口は減少した。ただし、こうした二極化現象は一時的なもので、やがては大都市圏の人口も減少に転ずることになる。国立社会保障・人口問題研究所の推計(2018年)では、2030年以降は、全ての都道府県の人口が減少すると見込まれている。
要するに、日本全体の人口が減少するのだから、地域の人口も減らざるを得ないのである。これに対して、多くの自治体は「人口減少に歯止めをかけ、あわよくば人口を増やしたい」という戦略を取っている。しかしこれは無理というものだ。人口が減ると、規模の経済が作用しなくなり、地域住民の生活は不便になるのだから、これからは「人口が減っても住んでいる人々の福祉水準が低下しないようにする」ことを目指すべきだ。これが「スマートシュリンク(賢く縮む)」という考え方である。具体的には、すでに各地で行われている、中心部に人々が集まるコンパクト化を目指すという方向性が考えられる。
第3に、世帯数の変化を見よう。世帯数は、2015年の5345万世帯から20年の5572万世帯に増加した。人口が減っているのに世帯数が増えたということは、いわゆる「核家族化」が進み、一世帯当たりの人数が減少したということである。一世帯当たり人数は、2015年の2.38人から20年の2.27人へと減少している。
これはいわゆる三世代同居が減るということで、これからの社会保障の在り方に大きな影響がある。これまでは、都市部を中心に核家族化が進んできたが、価値観の変化とともに、これからは地方部でも三世代同居は減るだろう。すると、保育や介護の社会化が求められるようになる。つまり、これまでは、祖父母が幼児の面倒を見たり、同居家族が介護を担うということが行われてきたが、これからは地方部においても保育園や介護施設の整備が必要になるということだ。