マンション管理の未来㊿ 住宅金融支援機構 理事長 毛利 信二氏(上)

マンション管理・再生の問題は地域の喫緊の課題
金融支援の必要性の周知へ積極的に活動


超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化に加え、管理員の高齢化という「三つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、4月から理事長に就任し、マンションの長寿命化や再生に向けた金融支援の役割が高まっている住宅金融支援機構の毛利信二氏に、今後の取り組み方針などを聞いた。


マンションの長寿命化・再生へ金融の側面から支援

――マンションや団地を取り巻く現状や課題をどうみているか。
 毛利氏 我が国のマンションストックが約676万戸あるとみられ、すっかり国民の住居の一態様として定着してきた。一方でマンションを取り巻く状況は、高経年マンションの増加や居住者の高齢化などのいわゆる「二つの老い」が進む中、建替事業の採算性の低下なども加わり、その適切な管理を維持していくことが大きな課題となっている。管理組合には長寿命化をこれまで以上に意識した長期修繕計画の検討などが求められている。
 これに対し、役員の担い手不足など管理組合の本来の機能の低下が顕在化し、組合財務や修繕積立金の見直しのほか、高経年化などに対応した機能回復・更新を目的とした修繕工事など、これらに必要な合意形成が難しくなっている。そのため、修繕積立金が不足したり、長期修繕計画の適切な見直しや必要な修繕工事が困難になるといった問題が起こり、マンションの居住環境の悪化が懸念される。
 昨年度のマンション管理適正化法の改正もそうした状況を踏まえたものであり、今後その適確な施行が求められていると認識している。
――マンション管理の適正化や再生が社会的に急務となっている中で、機構の果たす役割とは。
 毛利氏 機構は、住宅金融公庫の時代からマンションのライフサイクルに応じた資金ニーズに応えるべく、修繕積立金の計画的な積立てを支援する「マンションすまい・る債」、管理組合の大規模修繕工事などの費用を融資する「マンション共用部分リフォーム融資」、マンション建替え事業への融資を行う「まちづくり融資」を行なってきた。
 加えて、近年ではマンション管理や老朽化に金融支援の視点から取り組むため、マンション管理の関係団体や民間金融機関、行政機関、有識者などを参加メンバーとした「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」を開催している。機構には公庫以来培ってきた知見もあり、事務局を務めている。
 協議会では、将来の大規模修繕に向けた資金計画を組合で検討する際の支援ツール「マンションライフサイクルシミュレーション(MLS)」を昨年9月に公表するなど、管理適正化支援につながる取り組みを一つひとつ検討し、実施している。また組合向け融資への民間金融機関の参入を促進するために、与信モデルの構築といった金融インフラの視点からの検討も進めていく。
 今後とも適正化法改正を踏まえた地方公共団体の動きを、支店などを通じてよくウオッチしながら、マンション管理関係の専門家の方々と連携して、高経年マンションの適切な維持管理や改修、建替えが進むよう、金融の側面から支援を行なっていくことが役割になると考えている。

マンション管理の未来㊿ 住宅金融支援機構 理事長 毛利 信二氏(下)へ続く

2021/7/5 月刊マンションタイムズ

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