銀行や生保など複数の大手レンダーが、今年は昨年よりも不動産価格が上昇するとみていることがCBREの調査で分かった。価格上昇を見込む回答が前年調査の0%から17%に増え、下落予想(13%)を上回った。エクイティ投資家の投資意欲と資金需要が旺盛なことなどが背景。調査では、不動産ノンリコースローンの融資額がシニア・メザニンともに前年度を上回る見通しであることも分かった。
調査は18年10月に開始し今年で4度目。不動産ノンリコースローンを扱う国内外の銀行やリース会社など大手レンダーに景気予想や融資の方針などを聞いた。調査期間は4~5月。合計24社が回答した。
21年の融資戦略を聞く設問では、前年よりも融資を増やすとの回答がメザニンローンは71%、シニアローンは40%に上った。前年はメザニンの融資額がゼロだったレンダーの割合が47%と半数を占めており、多くの貸し手がコロナ禍で減った融資残高を増やそうとしている実態が浮かんだ。ただ、不動産金融市場における最大の不安要素に「国内外の経済ショック」を挙げる回答が50%に上るなど慎重姿勢も根強い。
融資の可否判断で最重視する項目は「LTV」が46%(前年調査40%)、「安定収益」が17%(16%)、「スプレッド」が8%(4%)。融資対象として魅力的なアセットは「物流施設」が50%(48%)、「賃貸マンション」が21%(16%)と上位で、「オフィス」は20%から8%に落ちた。融資の検討材料にESGを含むとする回答は全体の46%に上るが、それと同率の46%がESGに取り組む予定はない(ESGが融資可否に影響しない)とするなど答えが分かれた。(日刊不動産経済通信)