コロナ下・コロナ後の不動産マーケットはどうなるのか?~賃貸住宅市場の動向を中心に~宗健・麗澤大学客員教授(下)
宗健・麗澤大客員教授(賃貸住宅管理業法全面施行記念シンポジウム「安心・安全の賃貸住宅、賃貸管理業の未来」より)

コロナ下・コロナ後の不動産マーケットはどうなるのか?~賃貸住宅市場の動向を中心に~宗健・麗澤大学客員教授(上)より続く

賃貸住宅の社会的役割はどんどん高まっていく

 日本全体の高齢化が進む。15年時点での人口のピークは「40−44歳」、「65ー69歳」の2つある。そこから5年経って、今の日本人のピークは「45ー49歳」と「70歳ー74歳」にそれぞれシフトしている。今の日本人の年齢の中央値は約「48歳」だ。賃貸住宅は若い人が住んでいるイメージがあるが、日本人の約半分は50歳以上。賃貸住宅は若い人が住んで年齢と共に持ち家に移行していくのではなく、歳をある程度重ねても、賃貸に住んでいる人がかなりいるということになる。

 次に起こるシナリオは何か。2035年の人口のピークは「60−64歳」の一つだけとなり、それより下の世代のピークは消滅する。このような凄い状況が、15年先に確実にくる。60歳ぐらいの人が入居者のかなりの部分を占める時代が到来する。こうなった時に、どう建物を管理すればいいのか、家賃の滞納などはどう考えればいいのか。賃貸住宅が社会インフラとしてどう答えを出していくのか、残された時間は少ない。 

 高齢化が起きるとどうなるか。まず、引っ越さなくなる。年齢でみると45歳を過ぎると急激に引っ越さなくなる。持ち家率が上がるという理由もあるが、賃貸住宅だけで見ても同じことが言える。引越しするという行為は金額的にも精神的にもパワーがいることだからだ。だから引っ越さなくなる。人口の中心が60歳前後になると、移動しない社会、固定化された社会となる。これが今後15年ぐらいで確実に起きるイベントだ。 

 これらのことが不動産業界にどういう影響を与えるだろうか。仲介事業者からみると非常に厳しい。人の総数が増えないということは、引っ越し率が下がる。回転率が下がるから、仲介件数は下がる。一方で管理業の立場から見れば、引っ越さなくなるということは、管理の手間が掛からなくなる。現状回復工事もない。入れ替わらないから家賃が下落しにくくなる。粘着性が高く固定化されていくことで、家賃下落のスピードが抑制されることが十分考えられる。ただし高齢者が長期で住み続けるとなると、いずれは亡くなる。その場合の入居者の残置物をどうするか。賃貸借契約が相続されることについてどうするか。こういう課題に管理業界はどう対応するか。メリットと同時にやらなければいけないことも増える。

上昇を続ける家賃

 一方で家賃を見ると、不思議なことに東京周辺の家賃、東京以外の大都市部でも家賃が上昇基調にある。地方は下がっているところもあるが、全国で家賃がどんどん下がっているのは思い込みだ。23区の家賃の指数は、09年に対して15%も上がっているのが市場の実態だ。物件の供給がそんなに多くなくて、堅調に推移しているのが事実だろう。

 では家賃がなぜ上がるのか。根強くあるのが空き家の問題がある。私はかなり長く空き家に関する研究をしているが、全国で賃貸住宅の空き家率は20%という統計があるが、実際にはそんなに高くはない。おそらく東京都内の中心部は5%前後、Jリートの発表数字をみると3%程度。地方でも10%を超える空き家率を報告している管理会社はほとんどない。住宅土地統計調査をベースとした空き家率の調査は、その調査方法などから過大に見積もられている。実際の市場の空き家率は、都心部などでは足りない。これが実態だ。 

 例えば都心で賃貸住宅を探そうとする。3月に引っ越そうとしても、不動産業者は「今契約しないと次はないよ」と言われる。セールストークの部分はあるかもしれないが、本当のことだ。都心は物件を選べないほど空き家が少ない。だから家賃が上がっている。多くの人は、これだけ空き家が増えているのだから、家賃が上がるのはおかしい、と思うだろう。そうではなくて、空き家の測定方法にはいろんな方法があって、必ずしも空き家が本当に溢れているのではない、というのが市場の状態だと私は解釈している。

 都内の空室率は3、4%が平均値で、実は受給が逼迫していてかつコロナで着工が減っている。一方で人や世帯が減ってないので、実は家賃が上昇へ向かっているのだ。 

空き家が減りはじめた

 当方の研究で、地方の人口減少地域では、住宅ストックが減っているではないか?という測定結果が得られている。世帯数が減少している自治体で、住戸数も減少している自治体が全国的に増えているからだ。人は空き家になった家を昔は放置していた。だが兄弟など相続人が、お金を出し合うなどして、ちゃんと滅失していくことが地方で増えている。その結果、住宅の総数を数えると、前年比で下回っている自治体がかなり増えている。空き家問題の解決に向かい始めている。これは大都市でも一部起きていて、古いものがどんどん建て替わっている。新築着工における共同住宅の半分くらいは建て替えではないかと言われていて、着工がそのまま住宅ストックの純増をもたらしているとは言えない。

 ところで81年にスタートした新耐震基準から40年経った。それでもまだ、旧耐震物件がかなりある。品質の問題だ。築40年超のストックは、17年時点では6.96%に過ぎないが、27年には24.91%に達する。こういう旧耐震住宅を建て替えるのは、住宅の品質を上げるという意味でまだまだ必要だ。旧耐震で品質に劣るものは特に首都圏では首都直下型地震の懸念もあるし、総数をきちんと把握して取り組みを進めるべきだ。

(2021/6/18シンポジウム「安心・安全の賃貸住宅 賃貸管理業の未来」(不動産業ビジョン2030/賃貸住宅管理フォーラム実行委員会)より収録)

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