コロナ下・コロナ後の不動産マーケットはどうなるのか?~賃貸住宅市場の動向を中心に~宗健・麗澤大学客員教授(上) 
宗健・麗澤大客員教授

 人口動態で不動産マーケット、とりわけ賃貸住宅市場はどういう影響を受けるのか。この稿ではコロナ下におけるテレワークの浸透などの短期的な視点、人口動態・人口予測、高齢化や空き家などの進み具合といった中長期的な見方をお示ししたい。

テレワークの普及で地方や郊外へ人口が移動したのか?

 テレワークが人口減少に悩む地方自治体にとって、地方へ移住が進むかもしれないと、希望の一歩に見えているが、実際はどうなのか。大東建託賃貸未来研究所が20年4月に発表した、「コロナをきっかけとした引越し検討意向調査」によると、コロナをきっかけに郊外へ引っ越したいという意向の人は1割程度いた。ただし反対に、郊外から都心へ引越したいという人も、それよりは少し少ないが1割弱程度いることがわかった。これはテレワークができない人からすれば、通勤時の感染が不安であるから、通勤時間が短いのが魅力に映っているのではないかと考えられる。同様にコロナで地方から都会に移り住みたいという人が1割程度いる。

 自宅が賃貸か持ち家かでテレワークの実施率が異なっている。持ち家世帯の方が賃貸に比べてテレワーク実施率が高い。ただしコロナ下初期にテレワークをしていたが、20年4月以降にテレワークやめた人は半分いることがわかった。そして地域別でみると、東京・大阪・名古屋といった大都市圏におけるテレワーク実施率がじわじわ下がっており、地方都市、例えば福岡・札幌・仙台などになると20%を切ってくる。

 引っ越し意向というよりも、コロナをきっかけに、今自分が住んでいる街に魅力を再発見したという人が7割もいた。もちろん引っ越したいという人も一定数はいるのだが、コロナで大きく影響受けたのは引っ越しではなく、自分の街の魅力に気付いた人だ。テレワークができるということは、郊外・地方へ引っ越そうという意向が増えるのと同時に、平日の昼間に自分が住む街にいることによって、普段は出会わない人や素敵なお店があるのだなと気が付くのだ。今住んでいる街の見直しが進んだということ、これがコロナにおける1番の変化だ。

東京の人口はどうなっているのか 

 人口増減率を都道府県別で調べると、東京の人口がバブル期以来のマイナスーという一部報道があるが、実際には減っていない。東京の人口は東京都が出している推計値と、総務省の住民基本台帳移動報告という2つのデータがある。総務省の統計は推計値ではなく、こちらをみる限り人口は減ってはいない。東京の人口の20年暦年の増加率と20年度の増加率で比較すると、20年暦年の方が増加率が高い。つまり今年の3月の人の移動は少なかった。ただし世の中全体として見て、東京から大移動があったわけではない。そういう数字は表れていない。地方都市でも、例えば九州では福岡市への人口集中は昔から続いており、コロナによって福岡から九州各県への移動があったかというと、それも見られない。つまり全体としてみると、コロナをきっかけとした大きな移動の流れにはなっていないのではないかと解釈している。そして、民間各社が発表している「住みたい街ランキング」などのランキングをみても、コロナの前後で大きな順位の変動はない。今まで通り都心の人気もそれなりにあるし、郊外の好立地の評価も高いままだ。

今後の住宅市場はどうなるのか

 人口の移動量よりも、自然増減を含めた人口の増減の方が住宅市場に与える影響は大きい。では少子化が進んでいるから、住宅市場は今後厳しくなるのだろうか。人口の変動率と世帯数の変動率を都道府県別で見てみると、まずわかるのは人口ほど世帯数は減らないという事実だ。住宅市場は人口そのものよりも世帯数の単位で住宅の数が決まる。そのため思ったより、堅調に推移する地域がそれなりに残っている。ただしこれまでのように住宅市場が全国どこでも比較的拡大していた時代から、これから20年は例えば東京のように、20年後も世帯数が若干増えている地域もあれば、地方には20%くらい世帯数が減る地域もある。全国の中で今後20年で大きな地域差が生まれてくる。そして同じ県で全体として減少したとしても、県の中で減少する地域と、そうでない地域とでまた色分けされる。全国が一様に二極化するのではなく、細かい範囲でこれから20 年で人口のグラデーションが起きてくることがほぼ確実に予想できる未来だ。全国一律で市場が伸び続けてた時代から、それぞれの場所によって市場環境の差が生まれ、それが大きくなるのがこれからの20年だ。


持ち家取得のきっかけがなく賃貸居住

 その中で注目しているのが持ち家率が徐々に低下していること。98年と18年の住宅土地統計調査を比較すると、この20年間でなんと「45ー49歳」の区分で9.2ポイントも持ち家率が低下している。それだけこの世代の賃貸住宅へのシフトが起きているということだ。この大きな要因は未婚率が高くなっていること。持ち家の大きな取得の動機は結婚したから、子供ができたから、という家族構成の変化が主なきっかけだ。そのなかで未婚率が上がっているということは、経済的に買うことはできるが、買うきっかけがなくて賃貸という人が多いのだと解釈している。一方で、60代以上の持ち家率は高いが、それでもじわじわと持ち家率は下がっている。今後20年でもっと持ち家率は下がっていくと予測できる。60代以上のシニア世代の賃貸居住の割合が3割に達することも十分想定できる。賃貸住宅ストックはどうなっているのか。特徴的であるのは、民間賃貸住宅がこの20年で 大きく伸びている。その一方で公的賃貸住宅は大きく減っている。全体の持ち家率が下がっているなか、民間賃貸住宅は公的賃貸住宅の役割を肩代わりしてきたといっていい。公的賃貸住宅は行政の財政余力から考えると新設や適切な更新は難しい。つまり今まで以上に 公の役割はこれまで以上に民間が担わなければならない。これがこれからの20年だ。(2021/6/18シンポジウム「安心・安全の賃貸住宅 賃貸管理業の未来」(不動産業ビジョン2030/賃貸住宅管理フォーラム実行委員会)より収録)

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