マンション管理士/TALO都市企画代表
飯田太郎
新時代の管理運営を探る51 年々成長する植栽の力で マンションをイメージアップ(上)より続く
高経年マンションの
ヴィンテージ化にも寄与
植栽はマンションで快適に生活するうえで重要な要素の一つであり、外部に対してもマンション
の質の高さを演出しアピールする力がある。マンションの維持管理には長期的な視点が必要だが、植栽は生き物としての植物の特性にもとづく管理が求められる。理事等の役員が1年交代の輪番制の管理組合でも、安定した植栽管理をできるようにしたい。管理組合に継続的に検討するための植栽委員会等を設置できるといい。
また、植栽台帳を作り樹木の健康状態を把握することは重要である。植物の現状や維持管理作業
の内容を記録することで、経験や課題を継承することも重要である。同じ種類の樹木でも、場所によって成長の度合いが違うこともある。それらを把握し、例えば、今年の作業は成長の早いエリアだけにする、といった変則的な対応も可能になる。毎月の手入れのポイントを示した植栽カレン
ダー等があると、引き継ぎもスムーズだ。
建物の長期修繕計画と同様に、植栽も中長期的な計画を作成し、将来必要となる検討事項を把握
しておくことが重要である。植物も老齢化し、やがて植替えの必要が出てくる。支柱も時間ととも
に劣化する。樹木の根が張り、必要がなくなった支柱は撤去するべきだろう。また、風の強い場所
等では、支柱を定期的に新しいものに交換する、さらには補強する、ということも必要になる。予算面では、枯れた場合にかかる撤去や植え替え費用に加え、エントランスの前等、特にデザイン的に重要な場所は、改修の費用も視野に入れておきたい。改修も一度に全て実施するのは難しいことが多い。エリア毎に実施して様子をみていくのが現実的だろう。また、植物の成長を見据え、理想形に近づくまでにどの程度時間をかけるのかを共有していくことも必要だ。
植栽管理はマンションの中で建物・設備等のような法令による制限がなく、指針も示されていな
い。それだけに管理組合や居住者だけでなく、管理会社にとっても創意工夫の余地が大きく、特色
を発揮できる分野である。
特に高経年マンションでは建物の外観の劣化をカバーしヴィンテージ化をする上で大きな役割を
持つ。マンションの再生手法の一つとしてメニューに加えてみたらどうだろう。※本稿の執筆にあたりランドスケープデザイン事務所㈱TowaG・Worksの協力を得ました。
2021/10/5月刊マンションタイムズ