OYOの事業承継で賃貸住宅分野に新風―大手外資ファンドら多様な主体と協業
―新型コロナの影響をどうみる。
河本氏 投資は機関・個人投資家の両方の動きが鈍いが、売却価格が下がった物件もあり、一部のエクイティ投資家は積極姿勢だ。一方、銀行の融資は慎重で、案件の成約に時間がかかる傾向にある。アセット別ではホテルが稼働と銀行融資ともに厳しい状況で、回復はしばらく先になりそうだ。だが戻り始めれば一瞬で戻るだろう。その時期を逃さないことが肝心だ。
―国内で13件のホテルを開発中だ。
河本氏 高松市と岐阜県高山市に自社ブランドの「FAV HOTEL(ファブホテル)」を開業した。さらに数件を年内に開業する予定だ。福岡の糸島や沖縄の石垣島にホテルを作る計画もある。仕入れも続けているが、出物の情報が頻繁に入ってきている。
―運営中のホテルの状況はどうか。
河本氏 高松の施設は稼働率が上がってきた。3人以上のグループが2泊以上利用する事例が多い。関西圏の小旅行需要を取り込んでいるようだ。
―物流施設の開発機会を増やしている。
河本氏 千葉県湾岸や埼玉、神奈川、京都などで7件の施設を開発する計画だ。他に仕込み中の案件も10件以上ある。物流施設は自社で開発用地を取得し、開発計画を付加して半年以内に売却することにしている。当面の開発総額は1000億円を1つの目安にしている。
―ブルックフィールド・アセット・マネジメントが運用するファンドのSPCに船橋の物流施設用地を売却すると発表した。
河本氏 売却後にアセットマネジメントとプロジェクトマネジメントの業務を受注する予定だ。ブルック社とは今後も協業していきたい。様々な企業と組んで大きな事業を動かすのが当社の真骨頂だ。
―OYOの賃貸住宅事業を引き継いだ。
河本氏 当社の不動産テック部門を強化することが真の狙いであり、住宅のサブリースをそのまま続ける考えはない。賃貸住宅は内見や契約の枠組みなどにデジタル化の余地が大きく、合理化できる部分がまだまだある。当社が持つ現物不動産の知見とOYOの先端技術を掛け合わせれば面白いことをやれる。
―先端技術を具体的にどう活用する。
河本氏 具体案は今後示すが、住宅に限らず、例えば駐車場や物流施設などの空きスペースを短期的に貸し借りする需要は強い。そのマッチングには商機があるだろう。
―再生可能エネルギー事業にも熱心だ。
河本氏 脱炭素の機運が急速に高まっている。当社はこれまで太陽光発電施設を手掛けてきたが、新たに北海道の松前町で風力発電事業を始めた。それ以外に、耕作放棄地を営農型の太陽光発電施設に転用する事業も検討している。本年度に農業生産法人の設立要件が緩和される予定であり、そのチャンスを捉えたい。
―海外事業の進捗について。
河本氏 コロナ禍で渡航できないため保留していたが、インドネシア・ジャカルタ東部での戸建て分譲事業が動き始めた。現地の大手デベロッパーと組み、316戸の戸建て住宅や長屋などを建てる。近く造成を始める。現地での販売開始は9月を予定している。ジャカルタとタイ・バンコクに当社の現地法人がある。将来的に日本の投資家などに海外の案件を紹介するといったことも考えている。