安定性と安心感で高まる評価―底地に注目するそれぞれの理由(上)
底地が取引されたホテルニューグランドタワー館

底地投資が注目を集めている。コロナ・ショックに見舞われた1年、不動産投資市場では、底堅さを示したアセットで物件価格の上昇とキャップレートの圧縮が起こる一方、コロナ感染対策が運営に影響を及ぼしたアセットは、賃料の減額要請が出るなど、マーケットのボラティリティーが表面化した。そこで注目を浴びているのが、底地事業への投資。底地は、土地のみを対象に事業を展開するため、建物やテナントに発生する不測の事象に左右されにくい。底地事業の足元と今後の見通しを探った。

長期安定運用資産として高い注目

事業用定借は転用可能性の見極めが鍵

 長期の賃貸借契約で固定地代を受け取ることができ、建物は借地人が保有するため管理費・修繕費はかからない。さらに、底地(土地)は減価しないため、減価償却費を計上する必要がなく、分配金へ回すことができる。こうした特徴がリートという商品に好適と判断し、2019年2月に商業施設の底地が資産の過半を占めるエスコンジャパンリート投資法人が上場。2021年6月に上場を予定する東海道リート投資法人は、投資方針として底地を重視することを掲げている。Jリート全体では、2010年に17物件・805億6200万円だった底地取得実績は、2021年3月時点で151物件・5538億8700万円に達した。私募リートでは、2016年9月に日本商業開発が地主プライベートリート投資法人を設立し、設立5年目となる2021年5月時点で資産規模1000億円を実現。コロナ禍により、あらためて安定資産としての注目を集める底地投資は、事業用定期借地権の規定を活用している。

 そもそも底地とは、借地権が付いている宅地の所有権。借地権には建物の所有を目的とする地上権と土地の賃借権があるが、多くの底地は譲渡や転貸に地主の承諾が必要な賃借権が設定され、1992年に制定された借地借家法によって定められている。しかし、1992年以前に契約された物件は、1921年から続く借地法・借家法(旧法)が引き続き適用される。旧法は、借地人保護という色が強く、債務不履行等が発生しても、地主が契約解除を行い土地を売却することは非常に困難だった。そのため、流動性を失う土地が全国に存在。そうした「土地が戻らない」問題を改善するために新法で設定されたのが、定期借地権(定借)。一般定借が50年以上、事業用定借が10年以上50年未満の間で設定できる。定借では更新はできず、借地人は契約期間の満了時に建物を解体し更地で変換する義務を負う。ただし、地主と借地人の合意に基づく再契約は可能だ。

 事業用定借の特性を活かし、2000年から底地に特化したデベロッパーとして開発を行うのが日本商業開発。同グループ会社であり底地特化の地主プライベートリートの資産運用を行う、西羅弘文地主アセットマネジメント社長は、「われわれは、アップサイドやキャピタルゲインを狙うのではなく、安定した分配金利回りで4.0%以上を実現する。そのため、商品性としては不動産投資というより、契約に基づくキャッシュフローに投資をする長期安定金融商品の1つと認識している。最も重要なことは物件の立地条件。代替テナントを付けることが可能な転用性のある土地に投資することだ」と投資姿勢を述べる。事業用定借では、契約満了時にテナントと再契約を行うか入れ替えるかという主導権は地主が持つ。それにより常に運用事業の安定性が担保される仕組みだ。結果、長期安定性が評価され、2020年1月に行われた第4次増資から、年金や生損保、大学などの投資家が参加した。

 また、底地には安定利回りが期待できる商品という一面以外に、開発用地としての魅力もある。開発済みの底地の入札には、ファンドやリートに加え、ハウスメーカー、物流のデベロッパー、事業会社などが参加し、価格は高騰している。こうした競合環境について前出の西羅社長は、「プレーヤーの増加は望んだとおり。だが、われわれは20年の実績から、新規出店を計画するテナントが土地のオフバランスのために持ち込むケースや、住宅デべが余剰スペースにスーパーを開発し住宅地との相乗効果をねらうために持ち込むケース等が多く、相対で商品開発を行っている。他方、最近では、定借の残存年数が5年以下と短くなった物件が市場に出てきており、そうした物件を比較的安値で取得し、契約満了とともに新たなテナントを誘致、商品価値を上げるという事業モデルにも取り組んでいる」と述べ、増加する底地プレーヤーを競合と見なさず、むしろ底地市場を活性化させながら、先行者メリットを活かした事業を力強く推し進めている。

安定性と安心感で高まる評価―底地に注目するそれぞれの理由(下)へ続く

2021/06/05 不動産経済ファンドレビュー

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