観光業に求められる変化への対応 株式会社やまとごころ 代表取締役 村山慶輔(上)
株式会社やまとごころ 代表取締役 村山慶輔

観光業は正念場にある。目下の資金繰りや収益確保だけではなく、中長期的に見ても日本の観光業は厳しい局面に入っていると言えよう。というのも、3度目の緊急事態宣言が発令され、ワクチン接種が遅々として進まないなか、変異株ウイルスが広がりを見せている日本とは裏腹に、世界の一部の国では観光が再開しているからだ。いわゆる“マイクロツーリズム”と呼ばれるような近場や国内旅行はもちろん、国際観光の再開も進んでいる。

“周回遅れ”で
状況がより悪化する恐れも


 具体的には、中国は2021年4月の連休(清明節)で国内旅行者数がコロナ禍前の94.5%まで戻っている。感染状況によって日々変動するが、トラベルバブル(特定の2つの国間で隔離なしで相互往来を認める措置)も、「台湾−パラオ」や「香港−シンガポール」「オーストラリア−ニュージーランド」などで進められている。欧州でも、自国民の海外旅行を解禁する動きや、外国人観光客を受け入れる国が出はじめている。
 一方、日本は国際観光再開には時間がかかると見られ、世界の動きに比べると遅れていると言わざるを得ない。今般のコロナ禍は、過去に例を見ないものであり、トライアンドエラーをしながら施策の精度を上げていくことが重要だ。先駆けて国際観光を復活させた国やエリアでは、感染を抑えながら外国人観光客を受け入れるデータやノウハウが蓄積されていく。結果的に、周回遅れとなった国は、その遅れを取り戻すのにより多くの時間を要してしまう可能性がある。
 こうした厳しい状況のなか、日本の観光業は「変わること」が求められているのではないだろうか。つまり、従来のやり方を見直し、ときに痛みを伴うこともある改革を推進していく。具体的には、「未来を読む」「徹底的に守る」「攻める」という3つに真正面から向き合っていくことであろう。

 

未来を読み、徹底的に守りを
固めたうえで攻める

 まずは未来を読まなくてはならない。エネルギーやモビリティ、3Dプリンターといった技術のトレンドや、消費ニーズの変化を捉えることが大切だ。新技術が普及していくことで、どんな観光イノベーションを起こせるのかを考え、先駆けて行動していく。
 「開放的が好まれる」「小グループ化・個人化が加速する」「仕事と旅行の垣根が低くなる」「サステナブルが選ばれる基準になる」「清潔さがより重要な要素になる」といった消費者の嗜好の変化に先手を打って対応していくことも大切だ。
 「サステナブルが選ばれる基準になる」を例に挙げよう。民泊の最大手Airbnbはみなさんもご存知だろうが、一部の地域ではAirbnbは地域経済や環境に対して“サステナブルではない”として、fairbnbという民泊プラットフォームが導入されている。地域外からの過剰な投資を防ぐために1ホスト1物件というポリシーを掲げているfairbnbの興味深いところは、宿泊者が予約をする際に、地域コミュニティにおける生活の質の向上に貢献するプロジェクトへの参加を促されることだ。こうしたことを宿泊者の負担と考えるのではなく、後述するような“付加価値(高付加価値化)”と捉える必要がある。

観光業に求められる変化への対応 株式会社やまとごころ 代表取締役 村山慶輔(下)へ続く

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