金融庁は4月22日、第6回サステナブルファイナンス有識者会議を開催し、これまで議論された内容について論点整理を行った。6月中には報告書として取りまとめる考えだ。
有識者会議は、全国銀行協会や経団連、保険業界、学識者が参加。幅広くESGの課題をカバーするフレームで議論を行いつつ、当面の最重要課題は、2050年カーボンニュートラル実現を支える金融メカニズムの検討に置いている。
報告書取りまとめに向けた議論となった今会議では、まず前提として、サステナブルファイナンスが、「個々の金融機関や金融商品のあり方にとどまらず、サステナブルな社会を支える市場のインフラである」ことを確認。次に、基本的視点として、官民連携で推進していく方針を共通認識とし、横断的視点では、ESGと受託者責任の関係性、インパクト投資について議論が交わされた。さらに、各論では、企業・市場参加者・金融機関というプレーヤー別にそれぞれが抱える課題について意見が集約された。
議論の冒頭は、横断的視点の1つである受託者責任のあり方について参加者から意見が続いた。これまでの同会議において、昨今のESG投資拡大を受け、「ESG要素を考慮しないことは、受託者責任に反するのではないか」という指摘がされた。これについて、AM事業者から「『反する』とまで言うのは実態からすると厳しく、文言として強すぎる」という意見が出る一方、投資信託事業者からは「金融業界としてのスタンスを明確にするべき。受け身では何も変わらない」という考えも表明された。受託者責任の法的位置づけはアメリカやEU各国で異なるが、いずれの国においてもESG問題を考慮することは明らかに許容されると見なされている。日本では、2020年に日本版スチュワードシップコードが改定され、サステナビリティ(ESG要素を含む)の考慮が明記された。こうした流れから、受託者責任におけるESG要素の考慮については、積極的な表現が用いられる見通し。
各論については、企業や機関投資家、金融機関など市場に関わるプレーヤーから見た課題と論点整理が行われた。だが、参加者からは、「金融機関の機能、たとえば価格発見機能や流動性などの視点が必要だ」「各プレーヤーの相互作用を見るには、アクションで考える必要がある」といった、より動的な視点から整理を行う必要性が言及された。サステナブルであることを支える金融システムの構築は、もはや単なる資金の流れに関するルール作りではなく、社会のあり方そのものと連動する可能性が高い。そのため、可否の二元論や単純な規制に収まらない課題は多い。特に、最重要課題に置く2050年カーボンニュートラルは、製造業を中心に一足飛びの達成が難しい業種があり、実行可能なロードマップに沿って移行を押し進めるトランジションファイナンスの重要性を多くの参加者が意見した。
報告書の取りまとめにあたり、水口座長は、「未来を見越した議論といった長期的視点で社会の動向を捉える報告とすること」を強調。この会議を端緒とし、金融面からの指針をいかに実装していくのか、引き続き官民一体となったフォローアップでサステナブル社会を目指すことが求められている。
2021/5/5・15合併号 不動産経済ファンドレビュー