借金大国ニッポンの不動産バブル―低金利に慣れた市場に問われる耐性(上)
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 新型コロナ感染拡大で景気が悪化しているが、株価と不動産価格が上がり続けている。日本だけでなく世界各国が財政出動と低金利政策にかじを切り、市中に溢れたマネーがリスク資産に向かっている構図が鮮明だ。日本政府の2021年度予算案は一般会計が106.6兆円に上り9年連続で過去最大を更新。歳出が拡大する一方で、税収が落ち込み4割を借金で賄う台所事情の中で不動産市場はセーフヘブンか。


 
コロナ禍で株価も不動産価格も高値水準を維持
想定より早い国債発行1000兆円超に警戒感も

 コロナ禍でも株式市場は30年ぶりの高値水準となっている。不動産価格も上昇トレンドが止まらない。東日本不動産流通機構(レインズ)によれば、2020年1~12月の中古マンション平均価格は8年連続で上がり、戸建て価格も4年ぶりに過去最高の高値を更新した。東京カンテイの12月の調査でも、東京・大阪の大都市圏で中古マンション価格が調査開始以来の最高値となり、首都圏の新築分譲マンションは2020年の平均が初めて6000万円台に乗せてバブル経済期を超えた。
コロナ禍で、住宅需要は郊外や地方で高まっているものの、都心部においてもコロナが沈静化に向かえば、リモートワークから出社へと勤務体制がシフトするため、それに伴い都心・大都市での職住近接がコロナ前の水準に戻ると見られている。
 商業用不動産の取引では、コロナ禍で業績の悪化にあえぐ企業からの不動産放出も相次いでいるが、いずれもその取引価格は高い。音楽大手のエイベックスは、東京・南青山の本社ビルを売却することを決め、3月下旬に引き渡す。その売却益は簿価よりも290億円高い水準だ。三井不動産は1月19日、株式公開買い付けによって東京ドームを連結子会社とすることを発表した。その取得価格は1000億円を超えている。東京・汐留の電通本社ビル売却では、その売却先に不動産大手のヒューリックが優先交渉権を得たと報じられた。
 2021年は、このような資産・資本効率の改善に向けて保有資産を売却する動きが加速しそうだ。既存のプレーヤーに加えて、低い金利環境を背景に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などコア投資家による不動産投資を探る動きが想定される。大型の不動産取引が相次ぐ予想も少なくない。
新型コロナの影響を踏まえて、日銀はJリートの年間買い入れ額を900億円から倍増の1800億円に引き上げたが、2020年は計70回・1147億円を買い入れて相場が崩れないよう積極的に相場を支えた。このJリート相場を見てわかるように不動産マーケットが官製相場化している。バブル経済崩壊以降、政府政策のメインの1つとして不動産市場が底を割らないようにする意思が透けて見える。
だが、それでも将来に対する怖さや不安を口にする背景は、借金漬けニッポンの現状があるためだ。コロナ対応により、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を 2025年に黒字化する目標は絵に描いた餅となった。自民党財政再建推進本部(本部長・下村博文政調会長)は、財政危機により外国為替市場で円の急落を招く懸念があると昨年12月に指摘。中央銀行による国債の買い支えが円の信任に影響が及ぶと警戒感を示したものだ。財務省は1月22日、2022年度末の国債発行残高は1000兆円台を超える見通しを発表。コロナ対応の財源確保で当初想定より4年早く大台に乗る見通しとなった。
 経済評論家の藤巻健史氏は、「欧米諸国とは異なり、日本はすでに相当量の財政ファイナンスを実行してきただけに、先進諸国の中で最もハイパーインフレに見舞われる可能性が高い」と説明している。ハイパーインフレになれば、現在発行されている紙幣が紙切れになり、預金封鎖など世の中が混乱する。荒療治として現在の日銀・円通貨を一度放棄するという大混乱に見舞われて日本がクラッシュする。ややもすればオオカミ少年的なシナリオと化し始めているが、そのハイパー現象に「予兆はない。突然に起こる、需給バランスで読めない予期できないのが特徴だ」(藤巻氏)。時価評価で日銀を評価したときに長期金利が上昇すると、債務超過に陥ってしまうと警鐘を鳴らす。(借金大国ニッポンの不動産バブル―低金利に慣れた市場に問われる耐性(下)へ続く)

2021/2/5 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー
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