定期借地権の利用を考える 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科教授・齊藤広子(上)
横浜市立大学大学院都市社会文化研究科 教授 齊藤広子

「地価が下がっているので定期借地権を利用する必要はない」と言う人がいるが果たしてそうか。私は、安価に安心で魅力的なすまいやまちをつくるツールだと考える。しかし、気をつけるべきこともある。どんな可能性があり、何に気をつけるべきかを考えていきたい。

魅力的なコモンスペースのある
戸建て住宅地を実現


 「どこまでがわが家の敷地で、どこまでが道路? そんなことどうでもいいか。だって、どちらにしても私のものではないし、どういう利用ができるのかが大事だよな」というように、定期借地権の利用は、所有権に基づくのではなく、利用権をベースにした土地利用となり、まちづくりがしやすくなる。つまり、所有権ではつくりにくい住宅地をつくりやすい。具体的には、公共空間でもなく、個人宅の空間でもなく、地域のみんなでつかうコモンスペースのある住宅地の実現である。コモンスペースが、コミュニティ形成を促進し、景観向上に寄与することは周知の事実である。
 土地所有権型住宅地では、コモンスペースの所有権をどうするのか。所有者全員の共有にするのか。その場合には、マンションのように登記制度が整備されていないため、共有の不安定さがある。では、管理組合法人を立ち上げて法人所有にするのか。戸数が少ない場合に、法人にするのは手間・暇・費用がかかりすぎる。しかし、定期借地権を利用すれば、地主との契約のなかで利用範囲を自由に決めることができる。そのため、定期借地権をうまく利用し、魅力的なコモンスペースがある戸建て住宅地が全国に生まれている。土地の値上がりよりも値下がり、あるいは所有してしまうことへの不安から、住宅を買わない若い世代も増えているが、定期借地権住宅地は土地所有リスクのない不動産である。
 定期借地権が創設された1991年頃と違い、地価の大幅な上昇が見込みにくい現状では、ローリターンでもローリスクの定期借地権は地主にとっては当然、利用者にとっても安心な不動産利用の仕組みである。地主が地域文脈を踏まえてつくる、定期借地権を利用した魅力的な戸建て住宅地は、首都圏だけでなく、全国に広がっている。他の住宅地とは異なる景観・コミュニティ形成に寄与した住宅地は、他の地主の心を捉え、「自分もあんな住宅地の地主になりたい」と、共感を呼び、地域で連鎖が起こっている。設定した借地期間の終了時に、土地が細切れになって地主に返ってこないように、道路部分を行政に移管しないなどの土地返還時に配慮したルールの初期設定、また利用者と地主が一緒にまちをつくる仕組み等の設定があれば、より持続可能なまちに発展していける。

定期借地権の利用を考える 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科教授・齊藤広子(下)へ続く

2021/4/28 不動産経済Focus & Research

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