定期借地権の利用を考える 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科教授・齊藤広子(下)
横浜市立大学大学院都市社会文化研究科 教授 齊藤広子

定期借地権の利用を考える 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科教授・齊藤広子(上)より続く

建替え困難から解放された
マンションの実現


 マンションでの利用も広がっている。公共用地や社有地の有効利用等として、区分所有型マンションが定期借地権を利用し建設され分譲されている。マンションの建替えの困難さはすでに社会的に共有されていることである。その根本原因には、利用期限に対する期待値として「少しでも早く建替えたい」という人と、「今、買ってリフォームしたばかり。建替えなんて考えられない」という人と、区分所有者の意向が築年数を経るほど拡散することにある。そこで、予め設定された期限までの利用である定期借地権マンションが注目されている。最近供給されるものは借地期間70年、地上権設定が多い。建物の物理的寿命を考えると、もっと長い借地期間設定でもよい気がする。
 借地契約は地主と個々の区分所有者の契約になるが、管理の円滑化を考え、管理組合の敷地管理への関与を明確に供給時から規約等で位置づける例が増えている。定期借地権マンションの多くは更地にして土地を地主に返却する設定が多い。いわゆる建物譲渡特約付借地権の設定は多くはない。そこで、管理組合が原状回復までしっかりと関与するように、管理規約や確認書で、いつからどのように原状回復を進めるのかを明記しておくことである。

日本でより安心して利用しやすくする


 定期借地権をもっと普及するには、より安心して利用しやすくする仕組みが必要である。例えば、アメリカ・ハワイ州では、日本ですでに課題となっている、地代の交渉を管理組合が行うこと、地主の相続等により地主が望んだ場合に、底地の買い取りが管理組合で行えることが法で位置づけられている。イギリスでは、底地の買い取りの際に地主と揉めないように買取り価格の鑑定評価方法が法で規定されている。これらの制度から学び、わが国でも定期借地権をより安心して利用できる体制の構築が必要である。定期借地権が創設されて今年で30年、そろそろ制度の見直し・再整備を行うべき時ではないだろうか。
 不動産業界は今まではつくることがメインの仕事であったが、人口・世帯減少時代・ストック社会では、不動産が終わることをビジネスにすることも必要である。不動産を手放せばお金が得られた時代から、不動産を手放すのにお金がかかる時代に変わりつつある。お金がかかるからといって、不動産の放置が増えれば、まさに“負”動産になってしまう。最後の安楽死までをプロセスプランニングした不動産が求められている。所有者、利用者、地域社会のすべてが安心できる社会のために、私たちは価値観や実現方法を変え、時代にあった手法に変革していかなければならない。その1つのツールが定期借地権の利用である。
 定期借地権を利用した戸建て住宅地の実現には「コモンでつくる住まい・まち・人」(彰国社)、マンションへの対応は「定期借地権マンションの法的課題と対応」(信山社、2021年3月出版)をご参考いただきたい。

2021/4/28 不動産経済Focus & Research

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