みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が4月28日に設立したJR東日本不動産投資顧問へ出資を行い、新会社の不動産AM事業をグループ一体で支援していくと発表した。
具体的には、みずほ銀行がシニアレンダーとしてファイナンスを提供するほか、みずほリースはメザニンレンダーとしてリスクマネーを供給する。さらに、みずほ信託銀行がAM機能等を提供、みずほ証券がスキーム構築等に関する助言を行うなど、みずほFG各社が持つ金融ノウハウや機能を動員。JR東日本不動産投資顧問における私募ファンド事業の拡大や、不動産投資法人(REIT)の組成を目指し協働していく。
JR東日本は、みずほFGと連携し2020年2月、私募ファンド第1号の組成を発表。アセットマネジメント事業への参画を目指し、みずほFGと人材交流を行うなど準備を進め、このたび不動産投資顧問会社設立を実現した。JR東日本が株式の50.2%を保有するほか、ジェイアール東日本ビルディングが40.0%、みずほ銀とみずほ信託銀が4.9%ずつを保有する。新会社では、私募ファンドの組成を加速し、数年で1000億円規模への成長を目指す。並行して不動産投資法人「(仮)JR東日本リート」の組成を検討する。投資対象アセットは、首都圏のJR東日本沿線エリアを中心に、同グループの強みを発揮できるオフィス・商業・住宅。現在運用中の私募1号ファンドは、資産規模50億円。運用期間は2020年2月から5年間。外部から取得した商業施設4物件を運用している。その後、同5月に2号ファンド、同9月に3号ファンドを組成。総額100億円以上が積み上がっている。
JR東日本Gでは、刻々と変化する社会情勢を鑑み、2017年に「生活サービス事業成長ビジョン」、2018年に「変革2027」を発表。従前は、駅を中心とした各施設を保有・運営するビジネスモデルであったが、事業領域やエリアを拡大。駅の個性を活かしたまちづくりや沿線価値の向上を目指し、人々のくらしづくりにも注力している。Suicaの活用等ITサービスの充実と並び重点を置くのが生活サービス。2025年時点で、それらの営業収益比率を運輸セグメント対比6:4まで拡大する計画を打ち出している。実現を支えるのが、不動産投資事業。JR東日本Gが開発・所有する物件をファンドに組込み、開発利益を得る一方、外部からも積極的に物件を取得することで資産規模を拡大し、運用効率を向上させる。獲得した資金は、くらしづくり・まちづくりに資する分野に再投資を行う戦略で、回転型ビジネスを構築していく。
今般のコロナ禍により、JR東日本は変革のスピードアップを表明。2021年1月に具体的な数値目標を公表した。それによると、人々の生活様式の変化に応じるため、2018年の計画段階では2022年時点で30カ所整備するとしていたシェアオフィスを、2025年までに1200カ所展開するとしたほか、住宅展開戸数の目標は計3800戸、5G整備エリアは計100カ所設けることを新たな目標として掲げた。JR東日本は、こうした取組みを進め、2020年3月期に746億円であった不動産・ホテル事業の実績を2026年3月期には1130億円へ拡大する目標を示している。加えて、東京駅を中心とする大規模ターミナル開発、品川・大井町エリアで展開する国際水準の複合型まちづくりなど、大型開発事業も順次推進。街の価値向上へ不動産投資事業の成長が寄与していく。
2021/06/15 不動産経済ファンドレビュー