シリーズ;東京「人口減」をどうみるか⑤ 経済的事情で郊外へ、学生の上京も少なく―コロナでライフスタイル変化を実感    ハウスコム・田村穂社長

東京都が4月28日に発表した、令和3年4月1日現在の東京都の人口は、推計で1395万7000人。対前年同月比で2万5000人強減り、4カ月連続でマイナスとなっている。賃貸住宅市場は繁忙期を終えたところだが、転居需要はどうなっているのだろうか。そしてポストコロナ時代を迎えて賃貸需要、賃貸市場がどう変化しているか。不動産賃貸仲介大手のハウスコム(東京・港)の田村 穂社長に話を聞いた。

―2020年の賃貸市場を振り返ってみてどのように見るか

田村氏 一番重要なポイントは「人の動き」だ。人の動きが鈍化すると、この業界は成長が鈍化するのだということを改めて感じる1年だった。その一方で、コロナ禍でも引っ越し需要というのは一定数あるということもわかった。全体的な凹みは確かに大きいけれども、思っていたほどではなかった部分もある。他の業種、例えば飲食業の方々から比べると、衣食住の中で転居需要というものは一定程度あるのかなと。コロナの影響は20年4月くらいから始まったが、緊急事態宣言下でもどこの不動産会社も店舗を開けていたと思う。そこでは意外な需要や、生活の変化により引っ越しを伴わなければいけない人たちもいるということがわかった。様々な意味で引っ越さなければいけない人たちがいたということだ。

―「引っ越さなければならない」とは

田村氏 「今の部屋を出なければいけない」ということ。そして、理由は仕事の関係だ。仕事がなくなっていくことで転居を伴う人たちがいた。昨年4月~5月の緊急事態宣言では、飲食系・ホテル系に従事される方が、一時的に実家に帰るために今の住まいを引き上げるなどの動きがあった。一方でエッセンシャルワーカーの人達についても、刻一刻と代わる仕事のニーズの変化や、生活支援のために移動しなければならない動きが見られた。我々にとって本当に影響が大きかったのは、飲食系の人達の移動がぴたりと止まったということ。それは調査機関などでも(数値を)出しているが、賃貸仲介の現場でもその通りになっている。去年の4月くらいから求人倍率が一気に下がって東京、名古屋あたりはなかなか回復しなかったということが見てとれる。

―飲食業の方が出ていったと

田村氏 出て行って、入ってこなかったというという感じだ。そこに、本来は4月に入ってからも学生・法人の移動で埋まっていく部分がまだまだあったのが、そこで止まってしまったということだ。

―その4月~5月を過ぎたらどうなったか

田村氏 4月、5月が過ぎてからは徐々に回復していって、8月、9月は前年並みに上がっていった。それでまた10月くらいから新型コロナの第二波の影響で落ち始めて、10月の中旬から11月にかけてまたストーンと落ちていったという流れだ。人の動きが鈍化し、転居の動きも鈍化していった。

―別にそれは御社に限らずどこも同じような傾向ということか

田村氏 恐らくは、そうだと思う。また、よく言われている、「仕事がリモートになったことに合わせて転居をする」という今までにない動きについては、増えたことは増えているがほんのわずかな数にとどまったと認識している。世間で思われているほど、そうした動きは我々としては多くはなく、郊外店舗の一部のトレンドにとどまったと言える状態だ。逆にパートナーと一緒に住んで、広いところに移りたいというケースはある程度増えていったと見ている。

―つまり外に出て行っている人たちの理由というのは経済的な事情ということか

田村氏 経済的な事情が多かったと推測している。ただし、一部のハイスペックというか、ある一定層の方々については、リモート化による、より広い住まいへの引っ越しもできたのではないかと思う。実際、家にずっといるので日当たりを良くしよう、などの理由による転居はあるにはあり、実際に湘南などを含めた郊外エリアの売上が上がったので、多少なりともこうした移動はあったとは思う。ただ、年間を通して言えばそうでもなく、リアルな店舗、現場を持っている我々が感じ取れる限りでは、業界で言われている程ではなかった。

―学生の移動は

田村氏 10月11月に売上が落ちてきたことについては、学生の移動が例年に比べて止まっていたという背景があったと見ている。通常では、恐らく推薦入学が決まってくる時期に当たるが、オンライン講義の大学が多いため、部屋探しは様子見するご家庭が多かった。推薦が決まって11月から部屋探しを始められるケースが通常は多いが、まず近県の大学が決まった方については、2020年の場合は、あえてその時点からの部屋探しはしなかった方も多かったのではないか。「まあ、2時間くらいかければ通えるのではないか」という考え方で、それまでは「2時間かかるなら学校近くに引っ越したほうが良い」としていた層もまず様子を見ようということになったと見ている。

―上京して大学に通うという状況にはならなかったと

田村氏 引っ越しを伴わない地元の大学に通い始めるケースも増えたと推測している。現場の声も合わせていくと、特に名古屋圏などは、名古屋から東京にわざわざ出ることなく、名古屋の同レベルの大学で、しかも下宿せずに通える大学を選ぶ傾向が増えたと感じている。オンライン講義がほとんどになってしまい学校に行く必要がなくなってしまったことや、帰省なども思うようにできなくなる事態が出てきたことによって、親元を離れた一人暮らしに抵抗を感じるようになったのではないか。また、特にこれまで地方から出てきて一人暮らしを始める学生のお客様が多かったエリア(津田沼など)の数字があまり上がらない一方で、首都圏外で結構学生さんが来ている、という店舗もあった。背景にはもちろん、各ご家庭でのさまざまな考え方があると思う。部屋探しはライフスタイルの変化に合わせて行われることが多いが、ライフスタイルそのものの考え方がコロナ禍を経て少しずつ変わってきているのかもしれないと感じている。

シリーズ;東京「人口減」をどうみるか⑥へ続く)

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