富裕層がけん引する住宅市場―株高に支えられ反転リスクも潜在(上)


新型コロナウイルスの影響が業種・業界で鮮明に現れた。巣ごもり需要で家庭向けゲーム機器を販売する会社、物流会社、スーパーなど小売りが好調な半面、営業短縮や外国人客の消滅により百貨店や飲食・サービス系、ホテル・旅館の観光系、航空各社などに対する打撃は大きい。そうした中で分譲住宅市場は新築・中古とも堅調に推移している。だが、その多くは富裕層・アッパー層を対象とする住宅がマーケットをけん引している。


コロナ禍でも好調に推移する住宅取引
中古価格も強含み、高額帯人気は賃貸でも


 2021年は年初から緊急事態宣言でスタートした。昨年春に続く第2次緊急事態宣言が全面解除されたのが3月21日。国土交通省が23日に発表した公示地価では、その影響が色濃く出た。訪日客などインバウンド需要で地価を押し上げてきた地域ほど地価の下落率が大きくなり、象徴的だったのが大阪だ。下落率20%超は全国で5地点あったが、すべて大阪となり、下落率で全国1位が道頓堀で3割近く下げている。東京でも全国屈指の観光地を持つ浅草地区が1割下落。地価の下落地点がコロナの影響を鮮明に映し出した。


 だが、足もとの住宅取引は好調に推移し、消費意欲はおう盛だ。リクルート住まいカンパニーが首都圏の新築分譲マンションの2020年の契約動向を調べたところ、契約既婚世帯の共働き比率が2001年調査開始以来最高の72%に達し、購入価格も5538万円と最も高くなっている。世帯総年収は平均985万円で1000万円以上が全体の27%だった。同社の調べでは、中古マンションと並行して検討する割合も52%と初めて半数を超えている。デベロッパー各社が新規供給を抑制したことも要因だが、既存住宅が見直されているようだ。
 東日本不動産流通機構のデータを見ると、コロナ禍であっても中古マンションや中古の戸建て住宅が成約件数を伸ばしている。需要が供給を上回る状況が続き、優良物件が市場に出れば蒸発するかのように消えて品不足感が強い。
 一般的なサラリーマンにとって高嶺の花の物件も増えている。東京カンテイのデータで首都圏を見ても、中古マンション価格は強含みが続いている。都心の千代田区では平均1億円を2月に突破した。小田急不動産など3社が渋谷区内に供給した新築分譲マンション「リーフィアレジデンス上原」(総戸数65戸)では平均坪単価600万円ほどと推計され、最高価格は2億8700万円となっている。
 しかし、そうした分譲も賃貸も高額帯から埋まっていくのが現状だ。東京・目黒駅に近い場所にこの春竣工した高級賃貸「CONTRAL NAKAMEGURO」(総戸数70戸)は、月額家賃を約16万~60万円ほどに設定。高い賃料から入居が決まっているという。単身者やDINKS向けの物件だが、申し込みベースで年収2000万円を超える人が4割ほどを占めている。
 不動産テックのGAテクノロジーズが年収1000万円超えの人を対象に2020年1年間に賃貸成約した物件を集計したところ、1位が南麻布(港区)だった。2位が新宿(新宿区)、3位が勝どき(中央区)と続いた。そのほかトップ10には赤坂や六本木、高輪などを含めて港区から6エリアがランクインしている。

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2021/4/5 不動産経済ファンドレビュー

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