シリーズ;住宅市場とECの可能性① 交換できるくん・栗原社長に聞く(上)
交換できるくん_栗原将社長

経済産業省が2020年7月に公表したEC(電子商取引)市場調査レポート「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、19年のEC市場(物販BtoC)の規模は年間10兆円を超えた。日本のEC市場規模は過去5年で約1.5倍に達しており、20年以降はコロナ禍が加わり、EC市場の拡大は止まるところを知らない。一方で住宅・不動産分野は地場産業でもありECが定着したのは住宅設備など一部だ。住宅設備に関するEC市場のこれまでと今後についてどう見るか、住設機器販売サイト「交換できるくん」を運営する、株式会社交換できるくんの栗原将社長に聞いた。

―これまでの経緯について

栗原氏 創業は20年前。元々は水道工事の仕事からスタートしている。そこから個人住宅のトイレなどの水回りの工事などを始めて、徐々に他の工事も頼まれるようになり、創業から2年ほどでリフォーム業に転じた。「困りごとはなんでもやります」というスタイルだった。しかしリフォーム業に手を広げすぎると、人材の確保が必要になってくる。また人材教育に時間とコストが掛かる要因があり、町場のリフォーム店が教え込んで戦力化するのはなかなか難しかった。 

―ネットビジネスに転換したきっかけは

栗原氏 私自身元々パソコンが得意で、ホームページも自作していた。当時はまだ高速の常時接続回線がなく、モデムでダイヤルアップ接続していた時代で、ちょうどISDNが出始めた頃。当時は楽天市場やYahooオークションがスタートした頃だった。今後電子商取引(EC)市場は拡大して、時代の主流になるだろうと考え、扱う商材は、リフォームの仕事と近い、住宅設備をターゲットに始めた。

―かなりの老舗になる

栗原氏 住宅設備をEC で扱うということは一筋縄ではいかなかった。そもそも単価が高いし、取り付け工事も発生する。20年前の時点で、一般消費者が住宅設備をネットで買うというのはほとんどなく、いてもかなり通な人だった。そのため当初のユーザーは小規模な工務店だった。この時代設備機器は、小規模な工務店だと問屋から言い値で売ってもらっていたような時代。流通的にもグレーな部分が存在していた。そういうなか、弊社が標準価格が幾らになるのか、割引価格も含めてネットで公開したところ、既存の流通業者からクレームが殺到する事態になった。 

―苦労もあったと

栗原氏 ネットもブロードバンドへ移行して、工務店ではない、一般消費者からサイトへの問い合わせが増え、全国から注文依頼があった。商品は発送できるが、取り付けの問題がついて回った。当時は工事のネットワークがなく、地方からの依頼はお断りし、創業地の横浜周辺だけで工事を行っていた。近県の埼玉や千葉に出掛けることはあったが、朝に出掛けて、工事して戻ってきたら1日が終わってしまい、採算はとてもじゃないが取れなかった。

―それでどうしたか

栗原氏 採算は取りにくいものの、ネットの反響を見ると、ネットで個別の商品を注文し、取り付けまで行って貰いたい、というニーズが強いことはわかっていた。と言うのも、そもそもエンドユーザーのニーズとリフォーム工事業者のウォンツはミスマッチだからだ。不動産のプロで言うと、例えば大家や管理会社は、なぜ工事業者がお客様に応えられないのか、疑問に思うかもしれない。しかしリフォーム業者からしても、トイレの取り替え工事一つで駆けずり回れない。トイレの注文があれば、それだけを受けるのではなく、トイレをフックに浴室のリフォームなどのもっと大きな工事を受注したいと思っている。そうでなければ採算が合わないからだ。だがそのようなことは不動産のプロは元より、消費者からは全く理解ができない。そこを当時、ネットによって解決した。

―具体的な仕組みは

栗原氏 まず人件費を大幅に減らした。通常は工事の前に現場調査を行ってから見積もりを示す為、現場には工事と合わせて最低2回は足を運ぶ必要があった。それを工事当日の1回のみに減らし、設備の設置状況のヒアリングをネット上で、写真添付で行うようにした。エンドユーザーには事前に現場の写真をメールで送って貰えれば現場調査の手間が省ける。ECと割り切って、エンドユーザーは家電を選ぶ感覚で、サイト上で設備を選び、ウェブフォームで送ってもらってもらう。この仕組みを構築してから、「この際、全部リフォームしませんか?」といった他の工事業者と同じような営業は一切辞めた。E C以外は一切やらないと、サイトに特化して現在に至っている。

―工事はどうしているのか

栗原氏 工事を含めた品質をどう担保するかが会社としての命題だ。今は自社で15名の正社員スタッフと、契約で80名の外部スタッフがいて、ほぼ彼らが専任で行うようにしている。 工事部門の教育体制、組織体制は、20年かけて作り上げてきたので自信がある。高い品質で工事ができているのは当社の強みだ。

―施工前に現場いくのは1回だけと

栗原氏 サイト「交換できるくん」は6万ページ以上ある。ユーザーレビューやランキング載せることで、商品を選びやすい構造としている。エンドユーザーは自分で選んで、見積もり依頼をする。その商品が設置できるかどうか当社がジャッジして、ウェブで見積もりを発行し、エンドユーザーに発注を掛けてもらう。出張見積もりをせず、施工は自社で行うので、無駄がなく早い。自社で施工管理しているので、現場で何かトラブルがあれば会社全体でフォローする体制を敷いている。それをこれまで数十万件と積み重ね、ノウハウのデータストックも進んでいる。そうしたデータを活用しさらに業務プロセスやサービスをシンプルかつ明瞭にしていきたい。 

―リフォームは単価を高めることが必須と思えるが

栗原氏 住宅設備だけを愚直にやり続ける会社はなかなかない。普通はもっと大きな工事を取りたいとなるが、そこを敢えて切捨て、弊社は施工付きのE Cサイトに集中することで収益の最大化を図っていきたい。

―消費者側の意識として、リフォームはまず工務店に頼むとか、そういう感覚があるのでは。ネットで注文してというニーズはどこまであるのか

栗原氏 1件あたりの平均単価は、商品と工事代込みで13万円程。こうした工事を自宅近所の工務店に頼むだろうか?こんな安い工事では申し訳ないと思うのではないだろうか。付き合いがあればやるかもしれない。しかし初めて頼む場合であれば、勇気がいる値段だと思う。13万円という注文を受ける側も、それだけでは赤字だからあまり受けたくはないと思う。ここでミスマッチが生じる。エンドユーザー側からすれば不便極まりなく、業者から見ても不便だ。最近はホームセンターもリフォーム工事に力を入れているが、ホームセンターのカウンターは工務店への紹介の入り口であるし、受けた工務店も割りが合わないと思うだろう。でもこうした工事も受けないと、まとまった工事の依頼が来ないから嫌々うけるかもしれない。こうしたやりとりも、利用する側から見ればわからない話だと思う。

―工事価格について

栗原氏 お客様が支払うのは、割引した商品代金に、プラス工事代金。工事代金はトイレが3万5000円とか、水道が1万円とか、工事内容ごとに一覧にして明確化している。 例えばエアコン工事の現場でよくあるケースとして、配管などの追加費用をその場で請求するようなことがある。消費者からすれば出し抜かれた感がある。そういう追加費用の請求は当社では一切せず、見積りで提示した価格以上はいただいてはいない。

―売れ筋はトイレなのか

栗原氏 当社が元々トイレ工事から始めたのでそういう傾向にはなっている。ただし一番注文が多いのはキッチン周りだ。当社はシステムキッチン丸ごとの交換は敢えて行わずに、その中の設備機器の交換を行っている。システムキッチンは昔は流し台だったが、それをシステムキッチンに入れ替えることに意義があった。システムキッチンのリフォームが流行り出してから20年は経つ。多くの家のキッチンはシステムキッチンで、まだ新しいし物持ちも良く十分使える。ところがシステムキッチンの中身、設備機器だけを替えられる、という事を多くの消費者は知らない。だから当社はこれだけやりましょうと。ガスコンロとか食洗機とか蛇口だけとか、そういう小さな工事に特化している。 

―それで利益はどれだけ出るのか

栗原氏 収益化はできている。 ウェブで集客はコストが掛かるが、他社のモールとかマッチングサイトも使わず全て自社サイトへ集約し、ネット見積りにより人件費などの営業コストも抑えた。また施工についても自前で組織化するなど、あらゆる無駄を削ぎ落として、ようやく利益が出せるようになった。粗利益率は25%。13万円の単価だと普通にやっても赤字ではないだろうか。25%の利益が取れるのは、単なる安売りのECではなく、施工を自前で行っているからだ。

シリーズ;住宅市場とECの可能性① 交換できるくん・栗原社長に聞く(下)に続く

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