シリーズ;東京「人口減」をどうみるか④ 空室率は0.5%前後拡大、コロナ後は回復ータス(下)

東京「人口減」をどうみるか③ に続く) 株式会社タスの藤井和之・主任研究員は、急なコロナ禍によって賃貸住宅の供給調整が間に合わず、都区部の空室率が0.5%前後押し上げられたと推測する。空室率は16%と推定する。コロナ後の動向の見通しについても聞いた。

―空室率について。大手各社とは異なる数値だが

藤井氏 ここ数年、大手各社から発表される賃料指数は上昇基調にある。ただし国の統計である消費者物価指数の家賃はずっと下がり続けている。この齟齬が生じている理由は何だろうか?賃貸市場をみている場所が違うのではないか。例えば賃貸住宅市場の構造を仮に、満室稼働する優良物件(カテゴリーA)、市場で流通している一般的な物件(B)、市場で流通しづらい滞留物件(C)と分かれているとすると、レインズや住宅情報サイトに掲載されているのは、カテゴリーBだけだ。Bは宅建業者に仲介を委託する余裕のある、体力のある物件だ。カテゴリーCは競争力が弱く、宅建業者に仲介を委託する余裕がない物件。このCの物件は、宅建業者の顧客ではないため、情報がサイトに出てこない。BとCは体力の違いで、市況によってボーダーラインは上下する。

―住宅土地統計調査との違いは

藤井氏 デベや管理会社が扱っている物件はカテゴリーAとBだけである。カテゴリーAとBだけで計算すると空室率は5~10%程度で実質満室稼働だ。一方で当社が出している空室率(TVI)はカテゴリーBだけで算出している。そのため13%程度の空室率になる。一方で住宅土地統計調査の場合は、国勢調査に基づき物件が選択されるため、カテゴリーA、B、Cをすべて含むことになる。このため住宅土地統計調査の空室率は16%程度と高い数値となる。消費者物価指数の家賃が下がり続けているのもカテゴリーCが算出に含まれるためである。

―2021年はどうなるか

藤井氏 供給の調整はこれからだ。緊急事態宣言が明けて、どれだけ人がもどってくるかだ。今年1~3月も例年通り人は入ってきてない可能性が高い。東京商工リサーチの調査によると、今年春の転勤を伴う異動を大企業の7割、中小企業の9割が、中止もしくは延期している。あとは大学などの学生がどれだけ上京を控えるかだ。そもそも世帯数でみると、学生は住民登録してない人が多い分、隠れた部分で影響は大きいかもしれない。関東の大学生を対象とした調査だと、昨年は理系学生が週2日 文系が週0.6日しか学校に行けていない。登校が2週間に1回だけなら実家から通おうかという心理になる。都内の在住者は周辺3県をはじめ関東地方の出身者が多い。そのため賃貸住宅を解約して地元に帰る人もそれなりにいるのではないか。またアルバイトをして学費を賄っている大学生も多い。19年の大学生(文系)のアルバイト収入は月4万2800円あったのが、20年は3万6600円に激減している。これも賃貸住宅解約の要因となっている。

―他都市の動向について

藤井氏 2020年通年で見ると 北海道、宮城、大阪、福岡が転入超過になった。本社移転する企業は少数派と考えられるが、人員を支店に分散配置している企業は多いとみている。広島は転出超過が改善、岐阜や静岡、山口、香川、徳島なども同様の傾向にある。愛知は、19年の消費税率改正と20年4-6月期のグローバルなロックダウンで自動車産業の業績が低迷した影響で流出超過が続いているが、ここにきてトヨタの業績が急回復しているため、21年は改善するだろう。

―テレワークの動向について

藤井氏 20年はテレワークの導入企業が急増したが、直近でワーカーのテレワークの頻度が減っている。1、2月はテレワーク頻度が週1日以下の人が増えた。ワクチン接種も始まったこともあり、緊急事態宣言解除後は、テレワークの制度があっても利用する人が減るだろう。12月前半はコロナ前に比較して85%の人が職場に戻っていた。リクルートの調査では、そもそもテレワークをしたくない人も66%いる。したがって居住地が広がる可能性は少ないのではないか。ここ1年で移住している人も、ほとんどは都心から近いアクセスのいい場所だ。以上から考えると、コロナ収束後は9割がた元に戻るだろう。そして東京23区への人口集中が復活することで、賃貸住宅の供給過剰も解消され、カテゴリーCに落ちた物件もBに浮かび上がる可能性もある。

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