シリーズ;東京「人口減」をどうみるか③ ーコロナ禍で賃貸供給過剰に タス(上)
タス・藤井氏

コロナ禍が影響し、東京の人口減少が続いている。賃貸市場に詳しい、株式会社タスの藤井和之・主任研究員に、東京の賃貸住宅市場の動向と今後の見通しについて聞いた。

―東京の人口減が続いている

藤井氏 2020年はコロナに尽きる。一番大きかったのはこれまで東京の一人勝ちだったのが、コロナ禍で一人負けになったという点だ。今までだと東京は毎月8500世帯くらい増加していた。これがコロナの感染拡大後に急減している。グラフは東京都で作成しているが、減少しているのはほとんどが23区だ。23区外の市部の20年の世帯数増加幅は19年比1000世帯少ないぐらいだが、23区の世帯数増加幅は19年よりも約56,000世帯少ない。特に4月から12月に限ると世帯数は約7500世帯減少した。例年だと東京都は年間約10万世帯増えているが、20年は4万世帯しか増えてない。 

―2020年の賃貸市場を振り返ると

藤井氏 2020年はコロナが突然発生したため、供給調整が間に合っていない。08年のリーマン・ショック後から11年の東日本大震災と3、4年掛けて世帯数の増加が伸び悩んだ時期があったがこの時は貸家の着工戸数もそれに合わせて調整され、徐々に減った。今回のコロナ禍では急に世帯増加幅が減ったため、供給調整が間に合ってないことが窺える。

―どれくらい影響を受けているか

藤井氏 東京都は19年通年で、世帯数が10万525世帯増加した。20年はコロナショックにより通年で4万2834世帯しか増えていない。一方で東京都の賃貸住宅の供給は約6.4万戸あった。売買市場の成約数は、新築マンションは約1万戸、中古は約1.8万戸 新築分譲戸建ては約1500戸、中古戸建は約3600戸、注文は約1.5万戸ある。それぞれ従前に賃貸住宅に居住していた世帯は、新築マンションで約7600世帯、中古マンションで約1.2万世帯、新築分譲戸建てで約1000世帯、中古戸建で約2300世帯、注文住宅で約9800世帯と推計している。これらを合算すると、賃貸居住の需要減は約3.3万世帯となる。増加した世帯(4万2834世帯)が全て賃貸住宅に居住したとしても、賃貸需要の増加は最大でも約1万世帯しかない。都内の賃貸住宅の新規供給は6.4万戸あったから、最低でも5.4万戸は賃貸住宅の供給過剰が発生していた筈だ。

―もしコロナがなければ 

藤井氏 賃貸住宅の需要増が最大7万世帯程度になり、供給と需要がマッチしていたはず。月でみると約8500世帯増えていたのに対して、約6000世帯が賃貸へ、約2500世帯が持家ということでバランスが取れていた。リーマンショックの時は調整する猶予があったが、今回は猶予がなかったため23区に集中して影響が出た。

―空室率は

藤井氏 19年12月時点での都区部で賃貸居住世帯数は約290万世帯いる。住宅土地統計調査(2013年)では23区の空室率が15.7%とされているため、仮にこれが維持されていると仮定すると、想定される賃貸住宅のストックは約345万戸だ。賃貸住宅の供給数の8割が23区とすると、20年の23区での供給数は約5.1万戸。20年12月時点の想定賃貸住宅戸数(除却想定なし)は約350万戸となる。12月時点の23区の世帯数は約525万世帯のため、賃貸居住世帯数は約292万世帯と推定する。よって12月時点の空室率は16.6%となり、19年比で空室が0.9%上昇となる。供給されているうちの半分程度が除却された(ストック増加が約2.5万戸)と想定すると、推定空室率は16.0%だ。以上を勘案すると都区部の空室率は0.5%前後押し上げられた可能性がある。

シリーズ;東京「人口減」をどうみるか④へ続く

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