特集・堅調さが戻る分譲マンション市況<br>モデル来場や契約数はコロナ前の水準に ―導入進むオンライン接客も有効なツール
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コロナ禍で迎えた夏の新築分譲マンション市況。販売現場からは「想定よりも悪くない」「来場や契約数はコロナ前の水準に戻った」といった声が聞こえてくる。都心物件、郊外物件ともに足元は堅調。郊外物件では在宅勤務の影響で、駅距離だけでなく自然環境や間取りの広さを重視する傾向も出てきている。オンライン接客により新たな顧客層も開拓できているという。ただ、この回復傾向が今後も継続するかは秋以降の感染症の状況や景気動向に左右されるため注視が必要だ。
 緊急事態宣言が明けて以降のマンション販売の現場は、多くは6月以降に再開した。マスク着用や検温、モデルルーム内のこまめな消毒などの感染症対策を施しての販売再開だった。1日の来場者数を抑えているところが多いが、「6、7月は来場、契約ともにコロナ前の水準に戻った」(住友不動産)という。大きな背景の一つには、外出自粛によって「自宅の快適性や居住環境を意識される機会が増えた」(同)が挙げられる。三井不動産も「コロナ禍で改めて家探しを始めた顧客もいて堅調な動き」、三菱地所レジデンスも「6月は初めてマンション購入を考える人が多かった」と話す。
 もう一つの要因としては、オンライン接客の導入だ。これまで遠方に住んでいたり、家族の事情でモデルルームに来場できなかったりした新たな客層を開拓できている。「顧客の満足度が高く、お会いする前に物件の理解が進んでいると契約につながりやすい」(三菱地所レジデンス)といい、歩留まりの向上に寄与しているという。
 物件のオンライン案内は今のところ、既存のオンライン会議システムなどを転用して、モデルルームで物件の販売を担当していた販売員が物件の特徴などを紹介していく手法が比較的多い。現時点では、まだ契約に直結はしにくいものの、今後の新しい販売手法として発展を期待する関係者は少なくない。
 小田急不動産らが分譲する「リーフィアレジデンス橋本」(425戸)では、オンライン営業システム「ベルフェイス」を用いた物件案内を導入した。駅から離れた郊外の物件であるが、オンライン案内では「事前に反響を想定していなかった九州や広島から利用があった」(担当者)という。長谷工グループの㈱デベロップジャパンは、ライブ物件案内サービス「エアー・ダム」を開発し、総合地所が分譲する「ルネ横浜戸塚」(439戸)の販売で採用。「都心で生活する人など時間を効率的に使いたい層に、実際のモデルルームへの来場に向けた関心を養える」(担当者)として、来場増につなげる効果を期待する。

◎都心大規模は引続き人気、郊外に追い風

 都心と郊外に分けてみると、都心の新築分譲マンションではテレワークに対応した物件が人気を集める。東京・中央区の「パークタワー勝どきミッド/パークタワー勝どきサウス」は併設しているコワーキングスペースの評価が高く「反応数が大変好調」(三井不動産)という。大規模再開発プロジェクトの人気は依然として高く、住友不動産が販売する東京・有明の「シティタワーズ東京ベイ」は同街区内の大型商業施設などの開業効果で「販売状況が特に良い」(同社)。また、「窓から公園や緑が見える都心物件も人気」(三菱地所レジデンス)で、資産性を重視して「駅近物件を望む顧客も根強くいる」(同)。
 野村不動産は「駅距離というネックが緩和し、徒歩距離のある物件やバス便の物件でも広さや間数があり、共用のワークスペースや敷地内の公園などがある物件の評価が上がっている」とし、そうした条件に該当する東京・江東区の「プラウドシティ東雲キャナルマークス」や東京都三鷹市の「プラウドシティ吉祥寺」などの売れ行きが好調だという。
 郊外の新築分譲マンションでは、これまで非常に関心の高かった駅と駅距離という立地による資産性の評価だけでなく、自然環境や価格と専有面積のバランスなど様々な要素に着目した物件比較が行われるようになってきた。また、モデルルームには物件購入に向けて真剣な検討を進めてから来場する場合が多いとして、「購入意欲が高く、歩留まりは想定以上に良い状況」(準大手デベロッパー)と担当者が手応えを語る物件も目立つ。
 マンション購入希望者の物件選別の視野も広がったと見る向きも多い。駅から徒歩7分圏内がマンション適地とされてきたが、徒歩10分を超えても希望の広さや室数と価格のバランスやテレワークに適した設備などの着眼点から、物件によっては担当者の想定以上に販売が進捗している。郊外では音などの問題から脱賃貸の動きもみられるという。
 今後の郊外の新築分譲マンション市況は、都心に向けた距離や資産性という従来の評価とは異なり、立地や面積と価格のバランスがより重要視された上で、個々の物件の特性で評価が分かれてきそうだ。消費マインドの低下を警戒し、「市況が悪くない今の間に、ウェブを中心に広告を多く用いて商談を進めていく」(担当者)と話すデベロッパーもいる。
2020/09/07 日刊不動産経済通信

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