不動産経済アーカイブ①「あの時はこうだった」リーマン・ショック(上) 
当時を伝える新聞(出典=日本経済新聞)

 激動の不動産市場アーカイブ「あの時はこうだった」。第1回は2008年、世界に金融連鎖したリーマンショック。世界連鎖という点では今般のコロナ禍とも重なるが、当時、金融収縮(クレジット・クランチ)が不動産市場に与えた影響はダイレクトなものであり、支援を断たれた不動産ファンドや中堅デベロッパーの破たんが相次いだ。海の向こうの米国ではサブプライムローン問題という予兆がみられていたが、大手投資銀行の一角だったリーマン・ブラザーズが破たんに至ったのは08年9月。当初、日本への影響は軽微とされ、邦銀は米投資銀行の支援に廻ったが、時間の経過とともに、国内でも金融収縮とそれに伴い景気が低迷、不動産市場にインパクトを及ぼした。(以下、出典と日付は日刊不動産経済通信)

予兆・サブプライムローン問題

リーマンが日本の住宅融資事業から撤退

 リーマン・ブラザーズ・グループが日本での住宅ローン事業から撤退した。サブプライムローン問題により住宅ローン債権の証券化(RMBS)市場が世界的に冷え込んだことから、今後、日本で証券化事業を展開していくメリットが見込めないと判断した。
 新規の融資の申込み受付はすべて停止するとともに、今後は日本で住宅ローン事業を手掛けてきた100%出資子会社のリベルタス住宅ローン㈱を通じて、既に承認済のローンの実行と融資済みローンの回収業務のみを行っていく。なお、本業の投資銀行業は引き続き日本で行っていく方針。
 同社は、06年夏から日本での住宅ローン事業に参入。投資用ワンルームマンション(1R)の購入者を中心に、国内銀行の住宅融資の主要ターゲットではないが、信用力が高いと思われる個人投資家や実需の住宅購入者などを対象に融資を行ってきた。07年1月からは中古1Rの購入者向け融資事業にも進出していた。(2008/06/30)

リーマンショック勃発、影響注視

不動協、都市再生に対する金融支援要望
―岩沙理事長「信用収縮の長期化に懸念」

 不動産協会は18日、景気後退や資材の高騰、金融情勢の急激な悪化を踏まえ、民間都市再生事業に対する金融支援の確保・拡充などを柱とする「都市再生・地域再生の推進に関する要望」をまとめた。同日の理事会で決定したもので、岩沙弘道理事長(三井不動産社長)は、都市再生に対する金融支援とともに、「緊急総合対策」に盛り込まれている不動産業に対する資金調達の円滑化など強く訴えた。
 都市再生に対する要望では、民間都市開発推進機構や都市再生ファンドによる金融支援の着実な実施と貸付等の大幅な増額を求めていく。また、ヒートアイランド対策やCO 2対策といった「都市環境改善事業」に対する金融支援措置(出資・社債取得等)の創設、住民・企業などによるまちの魅力の維持・向上に対する支援も要望していく考え。
 また、リーマンショック、AIG問題が駆けめぐる中、協会幹部は日本の不動産マーケットに与える影響を冷静に分析。「不動産市場に直接影響はないが、信用収縮が長引くと収益不動産など影響が出てくる可能性がある」(岩沙理事長)、「投資銀行の破綻はマネーマーケットにインパクトを与えるだけで、影響は限定的」(南敬介副理事長=東京建物会長)、「金融当局が素早い対応を示しているものの、問題が長引くと影響が懸念される。十分注視する必要はある」(木村惠司副理事長=三菱地所社長)との見解を示した。
 岩沙理事長は、「内需主導型経済を確立するため、内需の柱である住宅投資を活性化させる住宅ローン減税の延長・拡充を柱とする税制改正要望活動を積極的に展開していく」姿勢を強調した。(2008/09/19)

市況や融資状況など国交省に現状を説明
―業界団体、幹部との懇談会等で意見具申

 金融市場の混乱などで事業環境が大幅に悪化しているなか、各不動産業界団体は国土交通省の幹部との懇談会を開催したり、会員会社へのヒアリングに基づいた最近の状況を国交省に説明するなど、現状を打開するため要望・意見具申などを行った。
 不動産協会と不動産流通経営協会の各正副理事長は、先週末に国交省の幹部とそれぞれ懇談会を開催した。不動協は、分譲マンション市場の厳しい現状や会員会社が倒産している状況などを説明。オフィスビル市況については、「現在堅調であるが、日本経済の腰折れを起こさないことと、都市再生政策を継続することが重要」とし、いわゆるリーマン・ショックについては、「金融サイドの問題であり、冷静に分けて考えるべき」との見解を示した。
 FRKは、最近の不動産流通市場として、「リテール部門は、成約件数は1割減程度と比較的堅調であるが、手数料ベースでは2~3割のダウンとなる。特に、これまで投資需要に支えられた都心部の高額マンションの動きが鈍い」などの実態を説明した。
 日本住宅建設産業協会、全国宅地建物取引業協会連合会、全日本不動産協会の3団体は、それぞれ会員会社に対するヒアリングを実施し、その結果に基づき、金融機関の融資の現状などを国交省に報告した。全宅連は、運転資金を含めて不動産業向け融資が円滑に進むためのセーフティネットの措置が必要であると要望。日住協と全日は、各会員会社に対する金融機関ごとの融資姿勢の詳細資料などを提出し、新規の開発事業や宅地造成などに対して融資条件が厳しいという実態を提示した。(2008/09/24)

レオパレスなどがリーマン分を借換えへ

 破綻した米国の大手証券会社、リーマン・ブラザーズの子会社のローンを利用していた賃貸住宅大手のレオパレス21と大東建託は、着工物件について他の金融機関への借り換えを急いでいる。
 レオパレス21はこれまで、アパート建築事業の顧客へのアパートローンに関する契約をリーマン日本法人子会社のリーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージ(LBCM、16日付で東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請)と結んでいた。LBCMのローンを前提に着工済み、もしくは着工予定のアパートは42棟・75億円にのぼる。現在、りそな銀行や三菱東京UFJ銀行など、他の提携先金融機関への借り換えを進めている。LBCMのノンリコースローンの未証券化分が287億円あり、そのうちレオパレスがLBCMに対して保有している債権16億6300万円が同社の負担分となる。すでに同社は他の金融機関も含め、リコースローンに切り替えを行っている。
 大東建託もLBCMのローンを前提とした着工のアパートが36棟・70億円あり、レオパレスと同様に、取引先の都銀や地銀への借り換えを進める。(2008/09/29)

金融収縮(クレジット・クランチ)

エルクリエイト、負債60・6億円で破産


 マンションの企画分譲と土地の販売を展開するエルクリエイト(横浜市西区、岡田勇二社長)は2日、破産手続き開始の申し立てを行った。負債は60億6000万円。
 同社は97年に設立、マンションの販売代理事業からスタートし、01年6月期からファミリーマンションの企画分譲と、土地の販売を中心とした不動産開発事業に進出。07年7月にはジャスダックに上場し、07年6月期には売上高62億5600万円を計上していた。
 不動産市況の急速な悪化で、主力の不動産開発事業の販売が伸び悩み、金融機関からの融資が受けられなくなっていた。8月には第三者割当による新株式および新株予約権が失権になった結果、資金繰りにメドが立たなくなり、破産手続開始申し立てとなった。(2008/10/06)

康和地所が民再法申請、負債143億円


 康和地所(東京・千代田区、夏目康広社長)は10月31日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、同日付で保全命令を受けた。負債は9月末時点で約143億5300万円。
 同社は99年2月に設立。「リリーベル」のブランド名でファミリーマンション分譲を展開。02年に外断熱工法を採用した外断熱マンションを首都圏で初めて供給。03年には介護事業に参入するなど他社との差別化を図ってきた。改正建築基準法による建築確認の遅延、分譲価格上昇に伴う顧客の買い控えに加え、金融市場の混乱により、売上げが減少。金融機関からの借入負担が重く、資金繰りが悪化していた。10月末の決済資金が確保できず、今回の措置となった。(2008/11/04)

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