コロナ禍で上半期の供給は史上最少の7489戸
2020年の首都圏マンション市場は「暴風雨のち快晴」というような様相であった。まず新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きくなる以前の1~3月を見ると、発売戸数は前年同期比35.5%減の4867戸にとどまっていた。また平均価格は6839万円と、高額な都心タワーマンションの供給が行われたこともあり同比9.5%上昇していた。価格が一段と高くなる中でエンドユーザーの動きは前年以上に鈍くなっており、またデベロッパーも新規供給を控えて在庫の圧縮を優先させたことで、需給ともに低調な状況に陥っていた。
そこに新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が追い打ちをかけた。多くのモデルルームの営業が自粛された4月、5月は発売戸数がそれぞれ686戸(前年同月比51.7%減)、393戸(同82.2%減)と大幅に減少、単月として過去最少の発売戸数を更新しつづけた。首都圏1都3県の緊急事態宣言が解除された5月25日以降、モデルルームの営業は再開されたものの当面は集客期間に当てられ、すぐに販売となる物件は少なく6月の発売戸数も前年同月比31.7%減の1543戸にとどまった。その結果、2020年上半期の発売戸数は前年同期比44.3%減の7489戸にとどまり、上半期としては1973年の調査開始以来、初めて1万戸を下回ることとなった。
しかし7月になると様相は一変する。7月の発売戸数は前年同月比7.8%増の2083戸と増加するとその後は年末まで勢いが続き、下半期の発売戸数は1万9739戸にまで伸びた。前年同期(1万7802戸)との比較では1937戸(10.9%)の増加で、上半期の減少から大きく挽回した。下半期の販売が伸びた最大の要因は、緊急事態宣言中に在宅ワークを実施していた層が今の住まいに不満を持ち、新しい住宅を積極的に探しはじめたことによるもので、緊急事態宣言期間に物件情報のポータルサイトは軒並みアクセス数を増やしたという。ポータルサイト経由の資料請求も伸び、6月にモデルルームの営業が再開するとまもなく来場は回復、7月以降は発売戸数も増加に転じた。下半期の発売戸数をエリア別に見ると、都区部7066戸(前年同期8272戸、14.6%減)、都下2481戸(同1257戸、97.4%増)、神奈川県4032戸(同3855戸、4.6%増)、埼玉県2869戸(同2606戸、10.1%増)、千葉県3291戸(同1812戸、81.6%増)と、減少したのは都区部のみで、都下と千葉県の伸びが目立っている。在宅ワークの普及によって幅広いエリアの物件が人気を集めた結果、郊外の復活が鮮明となった。
12.8%減の2万7228戸 平均価格は6000万円を突破
これによって、首都圏マンションの年間の発売戸数は2万7228戸と、前年の3万1238戸との比較では4010戸(12.8%)の減少となった。下半期の挽回によって過去最少とはならなかったものの、年間としては1992年(2万6248戸)以来28年ぶりに3万戸を下回っている。エリア別では下半期に供給を伸ばした都下、千葉県が増加している。初月契約率の平均は66.0%と、前年の62.6%に比べ3.4ポイント(P)アップしている。エリア別では都区部66.2%(前年比4.7Pアップ)、都下49.6%(同8.9Pダウン)、神奈川県70.0%(同5.4Pアップ)、埼玉県61.2%(同0.9Pダウン)、千葉県76.9%(同10.2Pアップ)と、神奈川県と千葉県が70%台に乗せている。
価格 を見ると、戸当たり平均価格は6083万円で、前年の5980万円に比べ1.7%の上昇、㎡単価も92.5万円で同(87.9万円)比5.2%の上昇となった。戸当たりは2年連続、㎡単価は8年連続の上昇。郊外においても立地を駅近などに厳選していることから価格は一段と上昇、戸当たり、単価ともに1990年(6123万円、93.4万円)以来の高値となっている。億ションの発売戸数は1818戸で、前年の1866戸に比べ48戸(2.6%)減少。また12月末の在庫は8905戸で、前年末の9095戸から190戸減少。そのうち完成済みの在庫は3283戸と、前年末(4167戸)比884戸減となっている。
2021年は供給3万2000戸と回復 当面は勢いを維持
2021年の市況は昨年後半の勢いを維持し、当面は需給ともに堅調に推移するものと思われる。昨年の秋商戦終盤に1期販売を行った超大型案件の販売が21年へと引き継がれるほか、都心や城東エリア、郊外などでも人気を集めそうな大型・超高層案件の供給が開始される。また2020年の首都圏の着工を見ると、前年比9.2%減の5万3913戸と落ち込んでいるものの、エリア別では東京都3万2895戸(前年比12.7%減)、神奈川県9707戸(同21.9%減)、埼玉県5991戸(同46.2%増)、千葉県5320戸(同2.1%増)と、埼玉県と千葉県が伸ばしていることから、供給の近郊・郊外エリアへのシフトは2021年も続くことになりそうだ。郊外のけん引によって、2021年の年間供給は3万2000戸と再び3万戸台を回復する見通しだ。エリア別の内訳は都区部1万4000戸(2020年比28.3%増)、都下3000戸(同7.5%減)、神奈川県7000戸(同25.3%増)、埼玉県4000戸(同18.8%増)、千葉県4000戸(同3.0%減)と、都区部、神奈川県、埼玉県が大きく増加する。
2021/2/10 不動産経済FAX-LINE