東京・横浜が主戦場、採算重視で仕入れ―売上1000億円近づく、M&Aも検討
―コロナ禍も1年半を過ぎた。市況をどうみる。
永井氏 昨春に営業を1カ月ほど自粛した影響で売り上げが大きく落ちた。ただ昨年夏以降、販売状況はコロナ前と同程度に戻った。現時点で投資用マンションの事業環境は悪くなっていない。景況が悪化するなか、安定的に収益を得られる商品だと評価されている。
―売上高の推移について。
永井氏 今期は売上高810億円、営業利益80億円、当期純利益55億円を計画しているが、今のところほぼ達成できると考えている。販売戸数も前期より400戸ほど増えそうだ。
―東京都心では用地仕入れが難化している。
永井氏 例えば江東区や墨田区などでは投資用マンションが増えて適地が減りつつあり、不動産各社も事業範囲を広げている。板橋などの城北や埼玉は当社が事業化の先鞭を付けたが、埼玉なら川口は有望だ。ファミリー向け物件であれば駅から多少離れても人気がある。ただ川口よりも都心から遠い場所で積極的に仕入れる考えはない。用地取得は難しい局面だが、だからこそ採算性を重視した仕入れを心掛ける。
―東京・横浜が主戦場だが、郊外の住宅も人気だ。戦略を見直す考えはあるか。
永井氏 単に物を仕入れて売るような業種ならそうした戦略変更も有効だと思うが、不動産業は仕入れや開発、販売などの工程に1年半から2年を要するため、大きく舵を切りにくい。安定した従来のやり方を続けるのが一番だと考えている。今の状況では、方向転換は虻蜂取らずになる可能性があるだろう。
―戦略を変えず、具体的にどう事業を展開する。
永井氏 都内では品川近辺で再開発が活発に行われ、複数の大手企業がオフィスを移す動きがある。このため品川への通勤が便利な川崎や横浜、都内の一部は居住人気が高く、当社もその需要を見越して供給を増やしてきた。だが都心は土地の値段が高止まりしている上、区によってはマンションの建設規制が厳しくなる傾向にある。一方、川崎と横浜には東京に比べ広い土地が残っていて、事業化の余地があるとみている。
―前期にファミリー向け物件の販売戸数が減った。
永井氏 まだワンルーム(1R)事業ほどには育ってはいないが、これから成長させていく。1Rとファミリー向けのマンションを経営の両軸にする方針だ。
―建設部門も持っている。
永井氏 同業他社から1R物件の施工を受注する機会が増えている。数社のゼネコンと付き合いがある。
―自社開発の中古物件も販売している。
永井氏 一度売った物件を買い取り、適正量の在庫を持っておくことで売り物がなくなるリスクを回避できる。賃貸収入も得られるためストックビジネスの意味合いもある。管理戸数は1万7000戸を超えた。
―中期経営計画で売上目標1000億円を掲げた。
永井氏 遠くない時期に達成できそうだ。1000億円の大台に乗せてそれを維持することで、企業としての信用と安定感が高まる。10月1日には持株会社制に移行するが、事業にスピード感が増すと思う。
―新規事業を立ち上げる考えは。
永井氏 最近は不動産会社がファンドを作ったりクラウドファンディングを始めたりする事例が多いが、そうした考えはない。新規事業については熟考する必要がある。ただ事業規模を拡大するという観点から、M&A(企業の合併・買収)は従来検討している。(日刊不動産経済通信)