東京が「世界の住みやすい都市ランキング」で第1位になった。アメリカの経済誌グローバルファイナンスが昨年11月に公表したもので、欧米などの主要都市に比べて、新型コロナウイルスによる死者数が少ないこと等が評価された。現在、緊急事態宣言が再び発せられているが、感染者や死者の数はニューヨーク、ロンドン、パリ等に比べて少なく、東京をはじめ日本ではパンデミックによる被害が相対的に少ないことは間違いない。とはいえ、同様のランキングでも別の結果もある。コロナ禍の行方は未だに見えないが、ウイズコロナ・ポストコロナの都市の暮らし、特にマンションについて考える。
グローバルファイナンス誌によるランキングの評価項目は、①経済力、②研究開発、③文化的相互作用、④居住性、⑤環境、⑥アクセシビリティ、⑦一人当たりの名目GDP、⑧コロナによる100万人当たりの死亡者数─である。ただしコロナによる死亡者数は、他の項目と違い生命に直接かかわる問題だけに、3倍の重みづけをした結果だという。
日本の都市がランキングで上位に入るのは、それほど珍しいことではない。英国・エコノミスト誌が2015年から隔年で実施している「世界の都市安全性指数ランキング」は57の指標を①医療・健康環境の安全性、②サイバーセキュリティー、③インフラの安全性、④個人の安全性─の4つのカテゴリーに分けて分析しているが、2019年版を含め3回連続で東京が1位、大阪も10位以内にランクされている。世界がコロナ禍に見舞われる前の評価だが、日本の都市の評価が特に高かったのは医療・健康環境の安全性である。ヘルスケアサービスの質やアクセス、安全で良質な食品、水と大気の安全性、救急サービスのスピードなどの項目が高い評価を得た。
日本の森記念財団都市戦略研究所が経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野で評価した「世界の都市総合力ランキング」では2016年から20年までロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シンガポールがいつも1〜5位を占めている。経済性を重視する都市ランキングでは、項目の選び方によって多少の違いがあるとしても、東京は概ね高い評価を得ている。
しかし、評価の視点を変えると別の結果が出る。これもアメリカのデータだが、旅行情報サイトのアッシャー&リリックが発表した「子育てに最適な国」ではランキングが大きく変わる。これはOECD(経済協力開発機構)に加盟する35カ国を①安全性、②幸福、③生活コスト、④健康、⑤教育、⑥子育てにかける時間─の6項目で評価したもので、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位スウェーデンというように北欧諸国が上位に並んでいる。「住みやすい都市ランキング」で上位を占めた各都市が所属する国々の評価は概して低く、イギリス23位、日本25位、アメリカは下から2番目の34位である。
グローバルファイナンス誌等のランキングがGDP等の経済力を重視するのに対し、アッシャー&リリック誌は生活コストや子育てかける時間等を評価項目としている。
アッシャー&リリックと同様の結果は国連機関の「可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)」による「世界幸福度報告書」も示している。2012年に第1回が発表されたもので7回目の20年は153の国と地域を対象にしている。各国・地域で実施した自分の主観的な幸福度が0から10のどの段階にあるかを答える世論調査で得られた数値にGDP、社会保障制度、健康寿命等の客観的データを加味して評価している。フィンランドが3年連続で1位になる等、上位をほぼ北欧諸国が独占。G7諸国ではカナダ11位、英国13位、ドイツ17位、米国18位、フランス24位、イタリア30位、日本は62位で2018年の54位、19年の58位からランクを下げている。(新時代の管理運営を探る㊸世界ランキングが示す 日本の都市とマンションの課題 下に続く)
月刊マンションタイムズ 2021年2月号