事故物件を歩く⑨ 事故物件のお祓い専門の神社を訪ねて―(上)

東京・西新宿で孤独死があったマンション(事故物件を歩く①参照)で祈祷を行った神主の神社「照天(てるてん)神社」を訪ねた。

 場所は神奈川県・相模原市。JR橋本駅からバスで40分ほど揺られて小雪がちらつく旧・津久井湖町の山中に辿り着く。こちらの神社では全国でも珍しい「不動産の神様」を祀っているという。さらに聞けば2017年に神奈川・座間のアパートで発生した連続殺害事件のお祓いも行ったとのこと。照天神社の金子雄貴(かねこ・ゆうき)宮司にこれまでの事故物件との関わりや、座間アパートの状況などについて尋ねた。

―神社のなりたちについて

金子氏 不動産業の守護神・国土神(くにのとこたちのかみ)を祀っており、不動産建築営業取引必勝神札・不動産管理物件安泰ほか、地相、家相、方位、日柄除、景気上昇特別祈願を行い、多くの不動産関係の皆様より崇敬いただいている。「不動産を売る、買う、増やす 不動産繁栄セット」(5,000 円、写真)を全国どこでも祈願の上、発送している。

写真=不動産繁栄セット

―事故物件のお祓いの実績と案件数の傾向について

金子氏 およそ15年前に始めた。これまで1500件以上の事故現場でお祓いを行った。毎年一定の件数をこなしているのではなく、波がある。案件が増えるのは決まって経済環境が悪くなったときだ。直近のピークは民主党政権の2011年~12年頃、1ドル80円台の超円高になった時で、この時期は自殺が急増した。その後自民党・安倍政権に変わりしばらく落ち着きをみせていたが、アベノミクスが機能しなかったためか、安倍政権時代の後半からまた自殺物件が増えだした。自殺は景気動向に左右されるが、孤独死については一貫して増加傾向にある。

―事故物件で特に印象に残っている現場は

金子氏 孤独死で、浴槽の中で死体が発見された現場が過酷だった。とにかく臭気が酷かった。これまで嗅いだことのない臭いで、思わず嘔吐しそうになった。水に浸かって亡くなった人は独特の臭いがする。白骨化してドロドロになっている。傍らには体液が黒く残り、髪の毛とか爪はそのまま残っている。この時の現場が一番キツかった。一時期風呂場の練炭自殺も流行った。若い人の自殺の現場は1Rマンションや、ウィークリーマンション、そういったところで、玄関の取手やロフトの階段、クローゼットで首吊りが多い。

―儀式のタイミングについて

金子氏 事故物件のお祓いを始めた当初は遺品整理や清掃が行われる前の段階で行っていたが、今は特別な場合を除いて、リフォームが終わった時点、あるいは特殊清掃の終了後に行うようにしている。00年代の特殊清掃業者は関東ではまだ数件しかなく、多くの事故現場の清掃は普通の大工さんが入ってやっていた。当時の大工は、事故現場をことのほか気持ち悪がり、工事に入る前に祈祷をやってくれと懇願されていたのでそのようにしていた。だがそれだと臭気が酷いのと、袴に臭いが付いて除去できなくなる。さらに事故現場は細菌が浮遊しているから、防護服を身に着けていないと肝炎を起こすと言われて、8年ぐらい前にリフォームや特殊清掃の前の祈祷は一切取りやめることにした。

金子雄貴(かねこ・ゆうき)宮司ー照天神社にて

―特殊清掃のレベルが上がっている

金子氏 特殊清掃業者の数は13、4年ぐらい前まではほんとうに少なかったが、今は雨後の筍のように出てきている印象だ。今や特殊清掃で業界団体と資格制度まで立ち上がるまで成長した。このように特殊清掃が業として確立されるようになるまでは、町場の大工などによるリフォームだけでは、工事した後も臭いが残っていたり、臭い戻りがあったりとクオリティがいまとは比較にならないほど低かった。いまは祈祷の依頼者には、見た目のリフォームだけでなく、できる限り臭気も取ってもらって欲しい、とお願いをしている。

事故物件を歩く⑩ 事故物件のお祓い専門の神社を訪ねてー(下)に続く)

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