駅前老朽ビル再生で脚光―定期借地権・地代前払い方式の威力(下) 

駅前老朽ビル再生で脚光―定期借地権・地代前払い方式の威力(上)より続く 

“期間70年”で商品力アップ
地主は借り入れなしで新築マンションを取得


 一方、そうした中小ビルのオーナーである地主は老朽化で収益力が落ちる一方のビルを建て替えたいが資金がない。そもそも立ち退き交渉の仕方も分からないということで途方に暮れているのが実態だ。オーナーからすれば、金銭負担ゼロでマンション建設までの業務もすべて大手不動産会社に任せることができる前払い地代方式はまさに救世主、ウソのような話だ。しかし前出のコンサルタントは、「東京都心の一等地を持っていることの強みを最大限に生かした手法であり、魔法の杖でもなんでもない」と語る。では、定期借地権がこれまであまり拡大してこなかったのはなぜだろうか。それは定期借地権が創設時には“期間50年”という商品が一般的だったことが大きい。つまり、50年という期間は地主には長く感じられた一方、住宅を購入するユーザーからは短いという印象をぬぐえなかったからである。
 ところが、その後定期借地権の期間は60年、70年と徐々に長期化され始め、公有地などに設定される場合は70年が主流となってきた。そうなると、借りるほうも「50年住んでもまだ20年残っている」ということで、安心感が強まってくる。地主にとって70年は更に長くなったわけだが、「よく考えれば70年も借り上げてくれて、しかもその間、無借金で取得したマンションからの家賃収入が入ると思えば十分納得できる話」(同コンサルタント)ということで地主に対する説得力も増してきている。要するに、“人生100年時代”を背景に、期間70年が主流となることで、定期借地権の住宅市場での商品力がアップし始めたということである。

建設期間中の地代は別途支給
購入者に対する地主は大手不動産会社(転定借)
 

 実際に提案された具体的事例を紹介しよう。駅前一等地で土地の時価が20億円、そこに70年の定期借地権を設定することで地主には前払い地代として時価の70~80%に相当する15億円が与えられる。地主はここからテナントの立ち退き費用1億円と解体費用2億円を支出し、残った12億円(15億円-3億円)に相当する分の新築マンションを取得する。地主にはマンションの優先取得権が与えられるので、自宅として使用する最上階住戸も、投資用にふさわしい住戸も自由に選ぶことができる。一方のデベロッパーは、現金支出としては実質3億円で、都内好立地でのマンション事業が可能となる。
 また、建て替え期間中(3年)は別途5000万円の地代が地主に支払われる契約で、建設期間を含めると定借期間は73年となる。地主はこの間、大手不動産会社(M社)と定期借地権契約を締結する。つまり、定期借地権付き分譲マンションを販売するM社は一般ユーザーに対して地主となる。いわゆる転定借契約で地主は一般ユーザーとの直接契約はないのでマンションユーザーとのトラブルがあったとしてもその影響を直接受けることはない。もちろん、土地の名義は地主のままである。

地主層(個人・法人双方)からの期待高まる
「土地を手放さない」という利点が最終決断に 
 

 定期借地権制度に詳しく、最新の市場にも精通している別のコンサルタントはこう語る。「確かに、東京都心部で古くからビルを所有している地主や中堅企業などが土地を手放したくないものの自力では建て替えも困難といったケースが多い。そうしたオーナーに対して大手不動産会社が定期借地権マンションを提案して事業化しているケースが増えていることは私も承知している。定借ではこれまで一時金としては権利金を授受することが多かった。その理由は地価の2分の1を超える権利金を収受すれば個人地主の場合は土地を売却したときと同じ『譲渡所得税』の対象となるため、権利金で“立体買い替えの特例”(等価交換マンションをするときに利用する特例)を適用することができたからだ。ただし法人地主の場合は民主党政権下の12年税制改正で立体買い替えの特例ができなくなってしまった。そのため現在では私も法人地主に対しては、地代一括前払い方式を推奨している」
 等価交換による課税の繰り延べ効果や等価交換マンションの収益性は地主にとって抜群だ。そのため老朽化ビルのオーナーが個人地主の場合は、今でも等価交換マンション方式による土地活用を提案するデベロッパーは多い。しかし、最終段階では土地を手放してしまうことへの迷いから締結に至らないことも多いようだ。その点、代々守ってきた土地を手放すことなく建物を再生し、かつ高い収益性も手にすることができる定期借地権・地代前払い方式が、ここにきて土地活用の最有望株として地主層に受け入れられ始めている。

2021/10/25 不動産経済ファンドレビュー

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