不動産経済Focus & Researchより~タワーマンションの防災対応を考える② (有)studio harappa 代表 村島正彦

タワーマンションの防災対応を考える② (有)studio harappa 代表 村島正彦

(提供:不動産経済Focus & Research)2024 年11月26日、「超高層住宅の災害対応を考える」( 住総研シンポジウム) が東京都港区にある建築会館ホールで開催された。記憶に新しいところでは、2019 年10 月の台風19 号による武蔵小杉のタワーマンションの浸水被害で停電は5日間に及び、住民の一時的な避難が行われた。また、明日起きてもおかしくないと言われる首都直下地震・東南海トラフ地震などにおいて、果たしてタワマンは大丈夫なのか。そんな疑問を日頃から抱えていたこともあり、シンポジウムを聴講してきた。前編に続く、第2回となる後編。

ー都では災害対策マンションの登録制度もー
 東京都住宅政策本部民間住宅部マンション課長の山口大助氏からは、「東京とどまるマンション」(注3)の紹介があった。これは東日本大震災を受けて2012 年に「東京都LCP 住宅情報登録・閲覧制度」として始められたものだ。創設時には、電気系統を二重化して停電時のEV や給水ポンプ運転への最低限の電力確保を要件とした。20 年の改定時にハード面に加えて、防災マニュアル策定( 必須)( 以下選択)年1回以上の防災訓練、3日分程度の飲料水・食糧の備蓄、応急用資部材の確保などソフト面の対策を認定要件に加えた。
東京都には、現在700 棟ほどのタワマンがあるとされ、この「東京とどまるマンション」へ登録されたタワマンは74 件であるという。選択項目とされる、水・食糧の備蓄は実施率が低いようだ(低・中高層含む全体では508 件登録/24 年10 月末)。山口氏は「登録マンションに対して、防災備蓄資材の購入費用や町会等との合同防災訓練に補助を行っている」と登録のメリットを訴える。

ーいざというときの助け合いが大切ー
 最後に、みなとBOUSAI プログラム代表・港区防災アドバイザーを務める久保井千勢氏からは、設備や備品の事前の備えに加えて、「いざというときに助け合う」ことの重要性が強調されて語られた。管理組合と居住者が双方につながるツール・情報共有手段の仕組みづくり。迅速な安否確認のために災害対策本部とフロア・ブロックごとなどの複数のマニュアルの整備などについてだ。そのために、中央区では管理組合向けに「震災時活動マニュアル策定の手引き」(注4)を示してHP で公開している。
防災対応などハード面については、タワマン初期の40 年前のものより、新しいものは防災設備面などでより優れている傾向にある。自分のマンションがどのような強み・弱みがあるのか確認しておくことも必要だ。経年による防災設備の維持修繕や機能向上の取り組みについても検討される必要があろう。また、全体を通して、防災マニュアルの整備や防災訓練などソフト面の対応の重要性について多く指摘された。タワマンは、数百の住戸を抱える大規模かつ多層フロアに跨がるなど、近隣づきあい・コミュニティ形成には不利な傾向がある。このシンポジウムで示された、評価ツールやマニュアル等を活用するなどして、防災力を高めるための管理組合・住民の取り組みが必要だと改めて認識させられた。

(注3)東京都「東京とどまるマンション」
https://www.mansiontokyo.metro.tokyo.lg.jp/kanri/02lcptouroku.html
(注4)東京都中央区「震災時活動マニュアル策定の手引き」
https://www.city.chuo.lg.jp/a0011/bousaianzen/bousai/bousaitaisaku/kousoujuutaku/manyuarusakuteinotebiki.html

コメントをどうぞ
最新情報はTwitterにて!

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめ記事